
食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。前回に続き大人の食物アレルギー、中でも穀物や魚類のアレルギーについて解説していただきます。
みなさん、こんにちは。前回のアレルギー編がかなり読まれているとのことで、さっそく第2弾になります。前回、日本人の食物アレルギーの原因物質上位12品目のうち、卵、ナッツ類、牛乳に関しては解説しました。今回は穀物、魚類についてつまびらかにしていきたいと思います。
まず小麦アレルギーですが、小麦粉を水でこねたときに生じるグルテンと呼ばれるたんぱく質がアレルゲンとなります。小麦粉はこのグルテンの含有量によって小麦粉は薄力粉、中力粉、強力粉と分類されています。同じ穀物でも、大麦やライ麦の場合は、粉を水でこねても小麦ほどはグルテンを生じません。とはいえ、小麦アレルギーの人が大麦やライ麦を食べられるかどうかは人によって異なります。ライ麦パンだからといって、安心はできません。
小麦はかなり多くの食品に含まれているので、代替食材がよく話題に上がります。
小麦粉の代替食材の代表格は「米粉」です。米粉はグルテンフリーの食材ではありますが、米粉パンとして販売されていても、中にはグルテンが添加されているものがありますので、注意が必要です。粉の仲間でいうと、「片栗粉」はじゃがいものでんぷんからつくられたものなのでグルテンフリーですが、「から揚げ粉」にはグルテンが含まれていることがあります。こちらも要注意です。

もう一つ追加しておきたいのが「お好み焼き粉」などのミックス粉です。小麦アレルギーではないのに、お好み焼きを食べたときにアレルギー症状が出ることがあるのです。
犯人は開封したお好み焼き粉が長期保存された結果、袋の中で繁殖したダニ。それが原因でアレルギーを起こすことがあります。世界的には当然ながらパンケーキが“キングオブ粉もん”なので、総称してパンケーキ症候群と呼ばれています。
でんぷんやたんぱく質のほか、うまみ成分、砂糖などを含むお好み焼き粉やパンケーキミックスなどのミックスは、実はダニの大好物。ダニは非常に小さいので、輪ゴムなどで留めていたとしても、わずかなすき間から容易に侵入してしまうのです。
みなさん、ご自宅の棚に古くなったたこ焼き粉などを置きっぱなしにしていませんか?しばらく使わない場合には、冷蔵庫で保管するようにしましょう。
一方、大豆アレルギーは類似の豆類や加工品で発症することは少なく、しょうゆ、みそ、大豆油などは原則として避ける必要はないといわれています。また納豆にだけ症状が出る場合もありますが、これは粘り成分に対するアレルギーであり、大豆アレルギーとは分けて考えられています。
続いて魚類のアレルギーについて解説します。最もアレルギーを起こしやすいのは熱を通して食すことのない「イクラ」です。そして、イクラアレルギーの患者さんの25%がたらこアレルギーを合併し、11%が子持ちシシャモアレルギーを合併するという研究成果が発表されています。加熱したとしてもアレルギーを発症する可能性はありますので気をつけてください。
ただし、これらの魚卵アレルギーがあったとしても、鶏卵アレルギーとの間に因果関係はありません。安心して食すことができます。
「エビ」はどうでしょう。エビアレルギーの患者さんの65%が、カニアレルギーを合併しています。タラバガニは実はカニではなくヤドカリという話は有名かと思いますが、具体的な数値はないものの、同じ甲殻類なので注意が必要です。
魚類に関する病態の中で、アレルギーと類似の症状を呈する「ヒスタミン中毒」というものがあります。マグロ、カツオ、カジキ、ブリ、サバ、サンマ、イワシ、アジなどの赤身魚は4℃を超える環境化ではとヒスタミンが生成され、それを口にしてしまうとアレルギーと同じような皮膚症状や腹部症状を起こしたり、最悪はアナフィラキシーと同じく血圧の低下を招きます。
しかも一度生成されたヒスタミンは加熱しても分解されないため、例えば「古くなったアジはフライにすればいいかな」というのは間違いということになります。
魚を買ってきたらすぐ冷蔵庫に入れ、室温に置きっぱなしにすることのないようにしてください。また鮮度が落ちても加熱したから安心というわけではありません。食べたとき舌やのどになにか違和感を覚えたら、食べるのをやめましょう。
ヒスタミン中毒はアレルギーではないのですが、抗アレルギー薬で症状が緩和されるので、詳しい検査をしないと混同されることがあります。
また食中毒を起こすことで有名なアニサキスですが、アナフィラキシーの原因物質として1位の食物、2位の薬物に続いて3番目に多いということがわかってきました。厳密に言うと寄生虫アレルギーになるので、食物アレルギーとは分けて考える必要がありますが、いったん診断を受けるとありとあらゆる魚類がリスクになるので、注意が必要です。次回は、思いがけないアレルギーの原因について触れたいと思います。
埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock