
東京から東海道線で揺られること一時間余り。歴史ある温泉地・湯河原がいま、おいしいもの×旅に加えて、「ロカボ」をキーワードに盛り上がっている。そんな湯河原ロカボツアーを編集部員が体験。ランチで向かった2軒目は、東京から新幹線でわざわざ行く人も少なくない「荒井商店」のロカボコース。

「制約があったほうが燃えるんです。3000種以上あるじゃがいもや、とうもろこしが主食のペルー料理でロカボなんて誰もやらないじゃないですか。ドMでよかった(笑)」
朗らかに笑いながら、そう話すのは「荒井商店」オーナーシェフの荒井隆宏さん。元々、東京・新橋で本格的なペルー料理を出していたが、2023年に湯河原に移転。「週に一度か二度は釣りをする」と言い、湯河原の豊かな自然が育む山の幸、海の幸を料理に落とし込む。
「なるべくペルー料理らしさを損なわずに、いかにロカボを実現するかは大変でした。じゃがいもやとうもろこしをあまり使えないので、柑橘類や唐辛子を利かせたり、油との相性がいい野菜をコースの前半に使用したり、工夫しました」


早速、ランチのロカボコースを体験してみた。
スタートはピーナッツのお通しから。通常は芋やバナナを揚げたおつまみスナックから始まるが、最初に糖質を摂取すると血糖値が上がってしまうためゆでピーナッツに。
二品目はセビーチェ。白身魚にレモンやライムなど柑橘類の果汁、玉ねぎやパクチーなどの香味野菜を和えた、言わずと知れたペルー料理の代表格だ。
この日の魚はホウボウ。魚種は日によって異なり、荒井さんがその日に釣ったものを出すこともあれば、数日ねかせたものが出ることもある。ロカボ仕様のため、普段の付け合わせにはコーンを使用しているが、菊芋のスライスを添えている。菊芋はじゃがいもやさつまいもなど、ほかの芋類に比べてデンプン質がほとんどなく血糖値を上げない。さらに、イヌリンという食物繊維が多いため、他の食材の糖質による血糖値の上昇の抑制にも役立つ食材だ。


三品目はアボカドのサラダ。脂質が多くカロリーも高いアボカドだが、糖質は低いので意外にもロカボ向きの食材だ。ペルー産の塩で一度水分を抜いた宗田鰹と茗荷、青のり、マヨネーズをミンチにしてアボカドでサンド。アボカドのしっかりしたコク、鰹の凝縮された旨味が広がりつつ、茗荷の清涼感が心地よい。

続く4品目は海老のスープ。海老を玉ねぎやジャイアントコーン、2種の唐辛子と一緒に煮込み、最後には生クリームを入れるのが定番の一品だ。スープにとけ出した濃厚な旨味と、生クリームやたまごのまろやかさがくせになる。




5品目は“ロモ・サルタード”。これもペルーの定番料理だ。
多くの移民が移り住んだペルーの特徴は「フュージョン料理」だと荒井シェフが言うように、調味料には醤油と赤ワインビネガーを使う。
「現地では中華鍋で炎をガンガンにあげてつくっている光景がよくありましたね。家系ラーメンじゃないですけど、産業道路沿いのスタミナ料理、みたいな立ち位置でした」と荒井シェフ。
大ぶりにカットされた肉(この日は鹿肉)は噛みごたえ抜群。醤油のコクと赤ワインビネガーの酸味がしっかり合わさり、妙に食べ進む。ご飯はインディカ米をベースに、キヌアも混ぜて、若干ではあるが白米よりは少ない糖質に抑えている。
たんぱく質や油脂に加え、酒もしっかり楽しむことで、ある程度ご飯を食べてもOKなのはありがたい!
ペルー産赤ワインと合わせれば、相性がいいのは間違いなしだ。
最後はデザートまで食べ、再びロカボとは思えない充実したランチタイムを過ごせた。

あまりにもおいしく、普通の食事だと勘違いして血糖値を確認するのを忘れていた。
血糖値が反応してくる、食べ始めから30分経過したときの数値を“リブレ2”のアプリで確認してみると、食事開始から今までずっと変わらない“100前後”を行ったり来たりしていた。正直、“ちょっとロカボを意識”したぐらいの食事では全然100を超えてしまっていたので、この結果にはびっくり。
「ペルー料理には、カチッと決まりすぎていないよさがあるんですよ。新橋で店をやっていたころも、ヴィーガンの対応とかやっていました。豆腐を使って“たまご”を再現する、なんていう無茶をやったこともありますよ(笑)」
ロカボで健康的。でもペルー料理のよさもしっかり味わえる。
この体験は、湯河原でしかできないと確信した。
撮影:阪本 勇 文:折敷出 陸(編集部)