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【2025年の一皿】名物の肉の薪焼きグリルと同じくらいのインパクト。忘れられない群馬県川場村「ヴェンティノーヴェ」の「冬野菜の包み焼き」

【2025年の一皿】名物の肉の薪焼きグリルと同じくらいのインパクト。忘れられない群馬県川場村「ヴェンティノーヴェ」の「冬野菜の包み焼き」

かつて西荻窪で愛され、現在は故郷・群馬県利根郡川場村で薪のかまどの前で腕を振るう「ヴェンティノーヴェ」の竹内シェフ。看板メニューである肉料理の素晴らしさは言わずもがなですが、今回改めて感銘を受けたのは、生命力あふれる野菜料理の数々でした。

肉はもちろんのこと、地場の野菜がとびきりおいしい!

今年もあっという間ですね……。思い起こすと仕事でもプライベートでも、色々なおいしいものをこの一年も頂きました。その中で「一皿」を選ぶというのは、すごく悩ましいものです。浅草「水口食堂」のエビフライもおいしかったし、溝の口「かとりや」の串もビールに最高。はたまた大変ご無沙汰でお邪魔した「ル・ブルギニヨン」の真鯛の白子のムニエルも、そして「吉春」の夏瓜餃子祭も……と、正直なところ「選べない」というのが本音です。

ということで、今年最後(おそらく)に食べて最も印象に残っているお料理を挙げたいと思います。群馬県川場村「ヴェンティノーヴェ」の冬野菜の包み焼きです。
もともとは西荻窪でスタートした竹内悠介シェフの店が、シェフの地元・川場村に移転して2022年にスタートしたお店です。合間のコロナ禍には「お家でVENTINOVE」とうたい、瓶詰の野菜や果物のお料理をオンラインで販売していたのをご存じの方も多いのではないでしょうか。私もたびたび携帯とにらめっこして、売り切れ前に手に入れようとしたのは良い思い出です。当時も、その瓶詰の野菜のポタージュやソテーなどのおいしさにも感動したものですが、今回、満を持してお店を訪問して、めくるめくおいしい料理を頂いた中でも、どうしても野菜のおいしさに気持ちが動いてしまいました。
もちろん、メインで頂いた料理もとびきりでした。薪火で焼き上げた赤城牛のサーロインのグリル、鹿と猪を使ったサルシッチャ、熊肉のポルペッテなど、力強さの中に清らかな味わいを残す肉料理の数々は実に見事です。ああ、シェフがフィレンツェの老舗トラットリアからじきじきに習ったという鶏バターも最高でした……。

けれど、この肉料理の前にでてくる地元野菜を使ったサラダや、前菜に添えられた色鮮やかな野菜たちが、肉と同じくらいのおいしさ。いちいち「おいしい!」と言葉が出てしまうくらい、印象的だったのです。

料理
メインの肉料理。右上から、熊肉のポルペッテ、鹿と猪のサルシッチャ、鶏バター、赤城牛サーロインの薪火グリル
料理
メインの肉料理の前に提供されるサラダをボウルで仕上げる。ボウルは、竹内シェフの実家が譲り受けた古い木製。「このあたりはうどん文化なので、うどんの麺を捏ねるためのものだったんだと思います」

例えば前菜の「鹿のツナと季節のフルーツ」も、鹿肉のツナにももちろん心がときめくのですが、下に置かれたフェンネルや苺、レッドキウイ、ローストしたクルミなど、一つ一つの食材が口に入れるたびに歓迎してくれるので、こちらも「はい、おいしいです」とリアクションをしたくなってしまいました。

料理
「鹿のツナと季節のフルーツ」。シェフの修業したトスカーナ地方は海から遠い地域も多い。そんな場所でや豚など肉をツナにみたてて調理することもあるそう。下にはフェンネル、レッドキウイなど優しい酸味と甘味の名脇役達がたっぷり。

そしてそのなかでも「冬野菜の包み焼き」です。赤かぶと菊芋、下仁田ねぎに色とりどりの野菜やピーナッツのソースが添えられている、野菜オンリーの、どちらかというと滋味深い、いわば地味めの一皿だったのですが、これが、ともかくどの野菜も甘くて、みずみずしくて。一番気にとめていなかった赤かぶが、かぶのいいところだけ集めたような美味で、あんまりかぶを好きと思ったことがない私が、こんなご馳走の数々の中で、かぶにKOされてしまいました。

料理
紙で包んでじっくりと火が通された、「冬野菜の包み焼き」。月並みな表現で恐縮ですが、ともかく野菜が甘くて。きっと大事に育てられた、育ちのいい野菜なんだな、としみじみ。
店内

他にもちろん、手打ちのパスタ(これまた絶品)やドルチェもたっぷりと頂き、幸せ満腹で「今年のおいしいもの〆」をすることができました。場所もさることながら席数が限られているため、予約を取るのにちょっと腕まくりが必要ではありますが、肉や野菜など、群馬県産の食材を使うことを信条としているお店だからこそ、現地へ行って味わう意味があるのだと確信しました。ぜひ、機会があれば挑戦してみてください。
今年も頑張った自分に、最高のご褒美となりました。来年も再訪できるように、また頑張りたいと思います。

店舗情報店舗情報

VENTINOVE
  • 【住所】群馬県利根郡川場村谷地2593‐1
  • 【電話番号】なし
  • 【営業時間】15:00〜19:00 (L.O.) ※予約必須 ※予約はHP内にある予約サイトから。宿泊(1日1組3名限定)は3か月前から、レストランの予約は2か月前よりスタート。
  • 【定休日】水曜、木曜
  • 【アクセス】上毛線沼田駅よりタクシー約20分

文:杉下春子(dancyu編集部)

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