
2025年もあと少し!ということで、1年中朝昼晩と食べに食べまくったdancyu編集部員が、今年特に感動した一皿を紹介。編集部の折敷出が選んだのは、無性に酒が進む山梨の郷土料理、鳥もつ煮です。
2025年3月「御料理ほりうち」に訪れた。
店は荒木町の車力門通り沿いにあり、店主・堀内さやかさんのつくる丁寧で上質な料理とお酒番・秋山ゆりさんの酒愛あふれる接客が人気を博す日本料理店だ。
実は、店の二人とは家族ぐるみで付き合いがあり、2018年の開店当初から(もっと言えば、二人が働いていたその前の店の頃から)祝い事のときや家族での食事、「おいしいもの食べたい!」というときは度々訪れていた。
行くと、間違いない満足感を得られる――。
だからこの日も、友人の誕生日を祝うために久しぶりに店へ。
訪れた日のコースは、全部で9品。
最初は、アイゴの昆布巻きとメジナの胡麻酢和え。アイゴは大分・やまろ渡邉から仕入れている。海藻を大量に食べることで身が臭くなりやすいが、干物にすることで元々持つ旨味をしっかりと感じられる。
次にアンコウのお吸い物、刺身の盛り合わせが出て、イカの風味が無性に酒を呼ぶ子持ちヤリイカに金目鯛の炭火焼きなどが続く。
“シェフス フォー ザ ブルー”という、「持続可能な魚食文化」を目指す料理人チームにも所属しているさやかさんらしい魚尽くしのコースだった。

そして、名物の“鳥もつ煮”が登場。
正直に言えば、もつは苦手である。積極的に頼むことはあまりない。だが、「ほりうち」の鳥もつ煮だけは、無性に食べたくなるような魅力がある。
ツヤッとして張りがあり、目の前に来た瞬間に思わず「おぉ~!」と声が漏れてしまう。太陽のように輝くきんかんもいいアクセントだ。モツ特有の風味を感じさせない上品な仕上がりながら、甘めの醤油味がしっかりからみ、一つ食べるごとに日本酒がぐいぐい進んでしまう。きんかんは添えられた楊枝でぷちっと刺し、あふれ出る黄身にモツをからませたらまた酒が進む。「皿の底に残ったタレだけでも、もう二杯いけそう……」とすら思えてしまうほど。
続く玉こんにゃくのアヒージョも個人的に好きな一品。山形県産生の玉こんにゃくをスルメイカのだしで2日間炊いて味を含ませ、さらにオイルで熱々に煮込んで提供される。オイルのコクとこんにゃくにしみ込んだ旨味が、じんわりと広がっていく。
締めには福井県産「いちほまれ」を使った土鍋ご飯。ご飯のお供にはからすみ、穴子煮、じゃこなどが添えられる。特に、旨味の塊みたいな「天たつ」の塩ウニには白飯が止まらなくなる。濃縮されたウニの豊かな風味が口の中で弾け、余韻がずっと続いていく。
隣を見れば、誘った友人も恍惚の表情。
よかった、満足していたのは自分だけじゃなかった。と胸をなでおろし、デザートまで完食。今日もおいしくて楽しい夜だったなーと、心の底から満足感が湧きたちながら店を出た。
「ほりうち」に次行けるのはいつかな。誰かの祝い事はないかな。なんて理由を探しながら、来年また行ける日を今から心待ちにしている。
文・撮影:折敷出 陸