
食いしん坊倶楽部のLINEオープンチャット「山手線!本気の昼飯マップ」で、メンバーから寄せられたランチメニューを徹底解剖してお届け。第7回は、恵比寿『チャモロ』の「やわらか厚切り牛タンオムライス」です。
恵比寿で50年以上続く名店です。「やわらか厚切り牛タンオムライス」は、やわらかく煮込んだ牛タン、とろりとした卵、ライス、デミグラスソースのすべてがパーフェクトな美味しさ。オムライスには珍しいバターライスで、さらっとしたデミグラスソースとの相性抜群です。
肉好きも、卵好きも唸らせる贅沢なオムライスがある。1973年創業の洋食屋『チャモロ』の「やわらか厚切り牛タンオムライス」だ。店の場所はJR「恵比寿駅」西口から徒歩5分。今でこそ恵比寿は飲食店が密集する賑やかなエリアだが、1994年に恵比寿ガーデンプレイスが開業するまでは閑散としていて、夜になれば人通りはほとんどなくなるような静かな街だった。『チャモロ』は、恵比寿のそんな怒涛の歴史のなかで生き抜いてきた名店である。
食いしん坊倶楽部の推薦者、Yumikoさんのお気に入りメニューが「やわらか厚切り牛タンオムライス」。オムライスの山の頂点にドン!と乗った厚切りの牛タンは大迫力。そして半熟卵がツヤツヤと輝き、うっとりするほど美しい。海のように並々と注がれたデミグラスソースとのコントラストがなんとも食欲をそそる。早速、いただきます!
圧力鍋で8時間煮込んだ牛タンは、スプーンでホロホロとほぐせるほどやわらか。豪快にオムライスのトップから牛タン、卵、バターライス、デミグラスソースをごそっと掬い上げて一口で味わってみるのが正解。スプーンからこぼれないようにパクッと一気に頬張ってみると、あまりの美味しさにビックリ。旨味がぎゅっと凝縮された牛タン。トロトロの半熟卵は、コクがありながらも後味がさらっとした軽やかなデミグラスソースと絶妙に絡み合う。これらすべての味を受け止め、全体を引き締めるかのように存在しているのが、ピリッと黒コショウを効かせたバターライスだ。洋食屋のトップスター達が口のなかで渾然一体となり、噛み締めるたびに多幸感に包まれていく。
『チャモロ』は、1973年に伊藤光二郎さんがオープンさせた洋食屋だ。「やわらか厚切り牛タンオムライス」は、「オムライスと牛タンシチューを一緒に食べたい」という常連客の熱い要望に応えて生まれた一品。以来、50年近く看板メニューとして愛されてきた。
しかし、2023年に伊藤さんの脚が悪くなったことで厨房に立てなくなり、『チャモロ』は閉店の危機に陥った。そこで「店を引き継ぎたい」と名乗り出たのが、同じビルの1階のイタリアン『Flamingo』のスタッフ一同。伊藤さんも『Flamingo』の繁盛ぶりをよく知っていたことから彼らの腕を信頼し、店の看板やメニューをそっくりそのまま譲ってくれたのだった。
そして伊藤さんから手渡されたのは、手書きのレシピ。A4の用紙には米の研ぎ方から使用する調味料のメーカーに至るまで、『チャモロ』の味のすべてが書き込まれていた。
『Flaminngo』の岡田一歩さんはこう話す。
「伊藤さんから受け継いだレシピには一切アレンジを加えていません。私たちがやりたかったのは、恵比寿という街で50年以上愛されてきた味を後世に残すこと。だから、オリジナルレシピに忠実に一皿一皿心を込めてつくっています」
恵比寿という街が移り変わりっても、時が流れて料理人が世代交代しても消えない味。それが、『チャモロ』の「やわらか厚切り牛タンオムライス」なのだ。
文:吉田彩乃 写真:赤澤昂宥