ウツボは浅い岩礁の海の最強グルマン。伊勢海老と蛸が大好き!蟹や魚も強靭な顎で捕食する。上質な餌は上質な白身と上質な皮のコラーゲンを形成する。それなのに何故?メジャーな食材にならなかったか?指を食いちぎられるほど危険な魚で、小骨が多く、料理が難しいからだ。
ウツボは千葉・静岡・三重・九州全域・香川を除く四国・南西諸島では、滋養強壮の美味として人気がある。確かにこれらの岩礁の海は伊勢海老の産地である。
各地で料理法の違いはあるが、「妊婦や産後の女性に食べさせる」 「目が悪くなったら食べる」 「強い男になるにはウツボを食べる」 という意味合いは共通している。
高知では神社の祭りの神饌としても高く評価される。神饌は最高のご馳走だから、ウツボは海のギャングではなく、マイナーな地域の高級魚と言っても過言ではない。
ぬめりを取り、ぶつ切りにして、昆布とトロトロに煮てもうまい!骨を丁寧に取り去り、薄造りの刺身もうまい!高知のように、タタキにしてもうまい!骨切りして、天麩羅もうまい!もちろん、鍋でもうまい!結論的には、ウツボは鱧もたじろぐ、ウナギ目の最強素材である。但し、鱧以上に凶暴で、料理が難しいから、鮮魚を送るのはNGだ。
水揚げしたウツボを生きたまま豊洲市場に入荷。非常に生命力が強いから、長旅でも元気いっぱい!そんな活のウツボを斬首して、神経〆にして、血抜き後、背開きにして、内臓と背骨と背びれを処理する。金タワシで皮のぬめりを徹底的に除去し、ナノバブル発生装置の水流で、残った内臓や血を洗い落とす。さらに天日塩の強めの塩水に漬けて身を締め、塩抜き後、4方向から風をあて2時間乾し上げる。尾の部分は骨切りし、さらに1時間乾して干物が完成!囚われの身となった岩礁の王者は、豊洲市場という刑場に移送され、強者たちの手で斬首され、上質な干物に生まれ変わる。
日本はウツボ生息地の北限。海水温上昇でウツボが増え、食害が深刻になっている。地元消費は人口減少で減る一方だから、ウツボから生態系を守るのは難しい。ウツボは美味で栄養価も高い!ウツボを食べる!を日本中に広げることは、とても大事だ。
文:(株)食文化 萩原章史