松尾貴史のカレードスコープ
広島の街角で絶妙なバランスの一皿に出会う|松尾貴史のカレードスコープ(75)

広島の街角で絶妙なバランスの一皿に出会う|松尾貴史のカレードスコープ(75)

広島を訪れた松尾さんは、昼ごはんをどこで食べようかとさまよっているとふと見覚えのあるカレー店を発見。数年ぶりに食べた「隠し味」が気になる一皿とは――。

爽やかな気分になる名店

広島滞在で、早めの昼食をとホテルの近くをさまよったら、見覚えのある角地の店が。急に記憶が蘇って、朝早くホテルの和定食をしっかり食べたのに、ちょうど11時で開店時間だったのでフラフラと入ったのだった。

外観

おそらく6、7年ぶりに訪問できたのだと思うが、フラフラと通りかかって見つけたのは幸運だった。
定番であろうと思われるナンディカレー800円を注文した。店内の雰囲気はカフェ風、空調も控えめで居心地がいい。

店内

カウンター内で調理をしている髭を蓄えた眼鏡のご主人と、髪を束ねたホール担当の女性でお二人のオペレーション。ご夫婦でなさっているのかな、しかしやり取りからすると違うのだろうか。

「デリー」の流れを汲んでいることを想像させる気持ちのいいカレーは、しっかりとした辛さがあって、しかし「しーはー」言いながら大汗をかくようなほどではなく絶妙のバランスに大満足。
キャベツのアチャールは結構たっぷりあるが、カレーの鋭い辛さを中和、というよりは仲をとり持つ感じか。カレーとアチャールを行ったり来たりするたびに嬉しさが口中に。さらりとした感触のグレイビーが、やや硬めに炊いてあるターメリックライスと相性が良く、おかわりしたいくらいの軽やかさ。

カレー

ほのかに土っぽい香りがするのはターメリックか。コリアンダーや、ほのかにクミンの香りもする。
ご主人に聞けば「これは秘密ですが」と、もう一つのスパイスも文字通り「隠し味」で使っているそうだ。カレーの脇役として、名演技をしている。

会計時に「パンニャの松尾さんですか」とご主人にお声がけいただいた。以前に一度うかがったことを覚えてくださっていたのだ。

男性2人

さりげなく名店がある広島の街角、ありがたいものだ。爽やかな気分で新幹線に乗ったのだった。

外観

店舗情報店舗情報

nandi
  • 【住所】広島県広島市中区小町6‐20
  • 【電話番号】082‐249‐4511
  • 【営業時間】11:00~16:00
  • 【定休日】月曜(月曜が祝日の場合は営業)
  • 【アクセス】広島電鉄「中電前駅」より3分

文・撮影:松尾貴史

松尾 貴史

松尾 貴史 (俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト)

1960年5月11日生まれ。神戸市出身。大阪芸術大学デザイン学科卒業。 俳優、タレント、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広く活躍。下北沢のカレー店「般゜若」(パンニャ)店主。著書に『人は違和感が9割』、『違和感ワンダーランド』、『ニッポンの違和感』(毎日新聞出版社)等がある。