広島を訪れた松尾さんは、昼ごはんをどこで食べようかとさまよっているとふと見覚えのあるカレー店を発見。数年ぶりに食べた「隠し味」が気になる一皿とは――。
広島滞在で、早めの昼食をとホテルの近くをさまよったら、見覚えのある角地の店が。急に記憶が蘇って、朝早くホテルの和定食をしっかり食べたのに、ちょうど11時で開店時間だったのでフラフラと入ったのだった。
おそらく6、7年ぶりに訪問できたのだと思うが、フラフラと通りかかって見つけたのは幸運だった。
定番であろうと思われるナンディカレー800円を注文した。店内の雰囲気はカフェ風、空調も控えめで居心地がいい。
カウンター内で調理をしている髭を蓄えた眼鏡のご主人と、髪を束ねたホール担当の女性でお二人のオペレーション。ご夫婦でなさっているのかな、しかしやり取りからすると違うのだろうか。
「デリー」の流れを汲んでいることを想像させる気持ちのいいカレーは、しっかりとした辛さがあって、しかし「しーはー」言いながら大汗をかくようなほどではなく絶妙のバランスに大満足。
キャベツのアチャールは結構たっぷりあるが、カレーの鋭い辛さを中和、というよりは仲をとり持つ感じか。カレーとアチャールを行ったり来たりするたびに嬉しさが口中に。さらりとした感触のグレイビーが、やや硬めに炊いてあるターメリックライスと相性が良く、おかわりしたいくらいの軽やかさ。
ほのかに土っぽい香りがするのはターメリックか。コリアンダーや、ほのかにクミンの香りもする。
ご主人に聞けば「これは秘密ですが」と、もう一つのスパイスも文字通り「隠し味」で使っているそうだ。カレーの脇役として、名演技をしている。
会計時に「パンニャの松尾さんですか」とご主人にお声がけいただいた。以前に一度うかがったことを覚えてくださっていたのだ。
さりげなく名店がある広島の街角、ありがたいものだ。爽やかな気分で新幹線に乗ったのだった。
文・撮影:松尾貴史