皮付きのじゃがいもを揚げて軽く塩をふっただけ。そんなシンプルな料理がとてつもなく美味しくて、食べ続けるとどんどん旨味が増していく……、そんな素敵な一皿に出会いました。
dancyu本誌やWEBでもお馴染みの絵本作家・イラストレーターの横山寛多さんと鎌倉のイタリアン「オステリア コマチーナ」で食事をすることになりました。鎌倉在住の横山さんはコマチーナの常連で、「あれは是非!」「あ、これも食べてほしい!」とお薦めが次から次へと出てきて一緒に黒板の品書きを見ているだけで楽しくなりました。
横山さんのお薦めはどれもハズレなし、というより、前菜、パスタ、メインと、どれを頼んでも美味しいのではないか!と思うような美味揃い。淡々とした表情で料理をつくる亀井良真シェフがイタリア人に見えてくるくらい、ここはカプリ島か!?と錯覚するくらい、シンプルながら素朴で奥深い旨味をしっかりと楽しめました。
鎌倉だけに、地元の野菜や旬の魚介の料理が素晴らしく、なかでも皿にドーンと一尾のって出てきた(貝やトマトなど他の具材は一切なし!)カサゴのアクアパッツァは感動的に旨い! 人生におけるアクアパッツァ観が変わりました……。
しかし、実は、一番感動したのはポテトフライでした。小ぶりのじゃがいもを皮ごと揚げて塩をふっただけ。何の変哲もないのに、じゃがいもの甘味と食感が本当にちょうどよく、皮が少しだけはがれるくらいの香ばしさが心地いい。塩味をつけるのではなく、じゃがいもの甘味や旨味、香ばしさを際立たせるための塩。すべてがさりげなく、でも素晴らしいバランスでじゃがいもの味わいを最大限に引き出している。いや、じゃがいも自身も気付いていない美味しさまで出ているのではないだろうか……。
一口でその美味しさがふわっと口の中に広がり、食べ進むうちにさらにどんどん旨味を感じます。余計なものがなにもなく、真っ当な美味しさがあることは凄い、素晴らしい!ワイン飲みながら、あっという間に二人で一皿食べてしまいました。
帰り際に「今日はなかったけど、馬肉のタルタルも美味しいんですよ!」と横山さん。後日、もちろん、また横山さんとコマチーナに行って、タルタルを食べました!(牛モツのボッリート、スパゲッティカラスミバターも素晴らしく美味しかった!)
文・写真:植野広生