肉の部位別で味や香りや食感が違うのは、その部位の役割が違うから当然だ。特にハツ(心臓)とタン(舌)は、様々な哺乳類に共通した味と香がある。
何故なら、ハツ(心筋)とタン(舌筋)は、明らかに他の筋肉と立ち位置が違うからだ。
舌は舌の形を変える内舌筋と、舌の位置を動かす外舌筋に分かれる。外舌筋は舌の軟骨と下顎の骨と繋がっているが、内舌筋はどこにも繋がっていないから、前後左右に動かせ、丸めたり伸ばしたりもできる唯一の筋肉。それだけ特殊であるが故に、他の肉の部位と一線を画すのは当然だ。タンはタンでしかなく、他の肉の部位とは違う。
牛タンは大きいから、タンの部位別に(先、付け根、下、真ん中)様々な料理ができる。焼く場合、皮に近い固い部分や先の部分は串、タン塩はスライス、脂がのった真ん中は厚切りステーキが断然うまい。煮る場合、和洋中、どんなジャンルでも素晴らしくなるのがタンの凄いところ。
黒毛和牛、ジャージー牛、あか牛、短角牛、ホルスタイン、交雑牛など、様々な血統で牛タンの味は違う。基本的に筋肉(赤身)と脂の味だから、肉がうまいブランド牛はタンも美味。但し、多くの黒毛和牛のブランド名は内臓肉では名乗れないから、ブランド牛を名乗るタンは少ない。今回案内するのは、黒毛和種の牛タンとなる。
文:(株)食文化 萩原章史