何度も行っている店なのに、何回も食べている定番の料理なのに、改めて感動と喜びを感じる――コロナ禍を経たことで、食に関する新たな気付きがいろいろありましたが、定番の料理に感動する幸せもそのひとつかもしれません。
浅草・観音裏で多くの人に愛され続けている洋食店「グリルグランド」は、落ち着いた雰囲気と安心できる美味しさが魅力。僕も大好きで、ほぼすべてのメニューを食べ尽くしましたが、久しぶりに仲間と食事会で訪れ、新たな感動を味わいました。
ハンバーグやオムライスなど、洋食は単品で注文する人が多いと思いますが、実は、コースを組み立てたり、宴会で呑みながら食べるのがたまらなく楽しい。それを存分に味合わせてくれるのがこの店なのです。
今回も、仲間の食べたいものを取り入れつつ、店の方と相談しながら宴会コースを組み立ててみました。まずは絶妙な食感と味付けが食欲をそそるチキンセロリサラダとカニサラダで爽やかな白ワイン、香り高いミニ甲イカのガーリックソテー、風味とコクがたまらないカニクリームコロッケ、旨味が強いカキフライと続けてしっかりめの白ワイン、さぁ赤ワインを開けて肉とデミグラスソースの旨味が凝縮した煮込みビーフハンバーグを、上質で滑らかなベシャメルが心地いいエビグラタン、そして牛ヒレステーキを堪能し、締めにしっとりとした旨味が広がるオムライスを頂き、デザートはしっかり甘いプリン。
全員の欲望を満たす、満腹にして大満足の完璧なコース仕立て!(と自画自賛)
どれも本当に美味しかったのですが、しかし、なかでも感動したのは牛ヒレステーキ。熱々の鉄板に置かれたヒレステーキに、テーブルでソースをじゅわーっとかけ回してくれた瞬間に、濃厚な香りが立ち上り、“空気中肉感濃度”が一気に上昇します。ソースを纏ったヒレ肉は静かにしかし噛むほどに旨味が広がっていき……ああ、幸せ!
さらに! 鉄板に残ったソースは肉汁も加わって凝縮した味わい。ここに白飯を入れてソースに混ぜて食べると……天国!
ニッポンの洋食は、白飯に合う味になっているのが特徴ですが、この牛ヒレステーキはその極みではないでしょうか。そして、肉の火入れやデミグラスソースの味わい、それらの相性など、洋食店のステーキは高度な技が求められる料理人の腕の見せ所。洋食店の花形メニューなのです。何度も食べていますが、しかし改めてその凄さに感動しました。「グランド」(地元の人はこう呼びます)の牛ヒレステーキは幸せの料理です!
洋食は大勢で行って、好きなものをいろいろ頼んで“宴会コース”を組み立てるのが楽しい!この日もよく食べ、よく呑みました。洋食宴会、最高!
文・写真:植野広生