多彩な点心などを堪能した後に、締めで食べた“中華風ハンバーグ目玉焼き丼”は、かき混ぜるほどに旨味がなじむ、禁断のご飯でした。
東京・代々木八幡にできた「味坊」グループの新店、「宝味八萬」は焼き物や点心が揃う広東料理の店です。チャーシューや蒸し餃子、炒め物などの点心をあれこれつまんで酒を飲み、締めには豉油皇炒麵(しやううぉんちゃうみん)を頼みました。
香港風醤油焼きそばで、具がなく麺と調味料の旨味がストレートに味わえます。締め、のはずだったのですが、絶妙の加減でついまた酒を頼んでしまい、締まらなかったので、主人の梁さんのお薦めに従い、本当の(?)締めに頼んだのが鮮蛋牛肉飯。ご飯の上に中華風ハンバーグと目玉焼きがのった“丼もの”ですが、醤油ベースのたれが肉と卵をつなぎ、味わいを深くします。
ただ、ハンバーグとご飯を一緒に口に入れ……といった普通の食べ方をしても、そこまでの感動はありません。「よくかき混ぜて!」と梁さんに言われた通りに、思い切り全体をかき混ぜると、ハンバーグの挽き肉や目玉焼きの半熟の黄身、そして旨いタレがご飯全体にからみ、口に入れるとふわりとした食感の中から、強い旨味がじわじわと広がります。濃い味わいの卵かけご飯のような、でもしっかり肉も感じる、絶妙なバランスの旨さ!上品に食べてはだめ、思い切りかき混ぜてガシガシ食べると美味しい不思議な丼でした。
あ、しかしやはりこれも旨味が強いのでまた酒を頼んでしまいました。いつまでも締まらない……。
文・写真:植野広生