牛肉の特徴は、国内でも高レベルの安心安全。飼育の特徴は、国内でも高レベルの持続可能性。料理の特徴は、手作業と低温調理技術のコラボレーション。前肩ばら肉 『ブリスケ』 の500gの塊を塩胡椒のみで直火焼き後、低温調理で仕上げたレア焼き加減。
「農場から食卓まで」の安心安全と品質管理をマネージメントする規格であり、世界的な信頼を得ている「SQF」はエビデンスに過ぎない。日本最北端に位置する牧場は、牛と環境に寄り添う経営をポリシーに据え、種付け・分娩・哺育・肥育・出荷まで、牧場の施設で完結している。東京港区ほどの面積(20㎢)で、2,500頭を超える飼育を(広大な放牧地で)し、その全ての履歴がマネージメントされているのは、驚異的としか言いようがない。厳寒の地のシステム運用は真面目な人々が不可欠のはずだ。
※ SQF … Safe, Quality, Food の頭文字
4月中旬〜11月下旬の短い春夏秋で、牧場は延べ約9,100頭分の飼料を収穫し、備蓄している。 『できるだけ輸入飼料に頼ることなく、自分たちの餌は自分たちで生産する』
牧草地で生産された草を牛が食べ、牛のベッドになり、牛の排泄物が牧草の肥料になる。海風がミネラルを運び、海が夏でも涼しい環境を保ち、海が内陸のような厳しい寒さを遠ざける。降水量は年間平均830mmほどと少ない。この気象条件が牛の好む環境と、農薬・化学肥料に頼らない飼料栽培を可能にしている。
ストレスが少ない環境で育った宗谷岬和牛は、牧草も食し、たっぷり放牧することで、豊かな香り・赤身の力強いうまさ・きめ細やかで軽めの霜降りが魅力だ。
工場スタッフが1個1個の肉の表情を見て、1700度の直火で表面を焼き固め、芳しい香を纏わせ、塩と胡椒をすり込む。真空パック後、60度程度のボイル槽で低温調理される。
ローストビーフの火加減は難しい。高くても低くても、肉の表情は違う。焼き加減は各自の好みではあるが、今回はレア感を残しつつ、均一に火がとおった仕上がりだ。
1日かけて冷蔵庫で解凍。火にかけないで、ぬるめのお湯にパックごと沈め、人肌より少し冷たいくらいに温める。パックから出し、グリルパンかフライパンの火力で、6面を短時間焼く。これで、ほぼ焼きたての感じが再現できる。厚切りでも薄切りでもうまい!赤身と脂身が混在するブリスケの魅力が楽しめる!そんなローストビーフだ。
文:(株)食文化 萩原章史