「インネパ食堂」で飲む!
道玄坂のインネパ酒場で、ゴージャスに肉三昧のBBQ飲み!──渋谷「ローカル渋谷」後編

道玄坂のインネパ酒場で、ゴージャスに肉三昧のBBQ飲み!──渋谷「ローカル渋谷」後編

「旨い肉料理」も「王道のネパール料理」もある、インネパ飲みの楽園が渋谷にあった!──街によくあるインド・ネパール料理店=インネパ食堂を巡って、スパイシーな料理をつまみに酒を飲み歩く連載企画。第18回目は、道玄坂のインネパ酒場で、ネパールの食肉事情に思いを馳せてみました。

近年、巷でよく見られるインド・ネパール料理店(※)やネパール料理専門店。そういったお店を酒場として楽しむ“インネパ飲み”が、酒好きの間でじわじわと注目を集めています。この連載ではインネパ飲みを実際に体験しながら、その魅力をお伝えしていきます。

※ネパール人が経営するインド料理店。通称「インネパ店」。街によくあるカジュアルな雰囲気のインド料理店の多くはネパール人が手掛けていて、それを示すようにネパール国旗が掲げられていたり、“モモ”などのネパール料理がメニューにあったりします。

案内役は、北は北海道・稚内から南は沖縄・宮古島まで、全国各地のインネパ食堂を食べ歩いた著書『日本のインド・ネパール料理店』が好評の、アジアハンター小林真樹さん。飲みのお供は、「東京ダルバートMAP」を編纂するカレー偏愛ライターの田嶋と、編集Mが務めます。

お店は前回に引き続き、道玄坂の雑居ビル2階に店舗を構える「ローカル渋谷」。後編では、肉料理で飲み食いしているうちに、あのラッシーの斬新な飲み方まで発見してしまいました。

看板
マッサージ店や雀荘、ガールズバーなどがテナントに入る雑居ビルの2階に「ローカル渋谷」はあります。
店内
カーテンで区切られた個室があったり、パーティ仕様な店内。

牛ハラミ串!ラムスペアリブ!肉料理に齧りつく!

前回まではファイヤースープモモや生春巻きなど、ネパール料理を中心としたエスニック料理を肴に飲んでいった一行。実はこの「ローカル渋谷」は、直火でダイナミックに焼いた、BBQメニューも大きな売りなのです。牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉と、さまざまに揃っています。そんなわけで、いざBBQ肉を食べてみることにしました。

まずはハラミ肉をステンレス串に豪快に刺して焼いた“ビールハラミサテ”です。肉質が驚くほどやわらかく、またシンプルに塩とこしょうで味付けされていて、そのやわらかさとジューシーさが一層際立っています。

ビールハラミサテ
ビールハラミサテ。
編集M
ネパール山椒・ティムルの効いたトマトソースが添えられ、さりげなくネパール魂が垣間見られるところもいいです

そして次なる1品が到着した瞬間、一同から「おおお!」と歓声が上がりました。オーダーしたのは“ラムスペアリブ”。表面はカリッと、中はジューシーに火入れされ、炭の香りとラムならではの濃い肉の風味が口いっぱいに広がります。

ラムスペアリブ
ラムスペアリブ。
田嶋
これはまさに、強火で脂を落としながら豪快に焼く肉のおいしさ! またスパイシーなソースが良いアクセントで、酒を飲まずにはいられません
編集M
ラム肉そのものの質が良くて。肉料理として、しっかりおいしい!
店内
店内
田嶋
それにしても、この店がまさにそうですが、ネパール人の料理店は肉がおいしいことが多いです。なぜなのでしょう?
小林
実は日本にいるネパール人は、食肉関連の仕事に就く人が多いんです。とくに1990年代~2000年代は、来日して食肉卸や食肉処理業に携わるネパール人がたくさんいました。そうした関係からネパール人経営者は、良質な肉を安く仕入れるルートを確立している人が多いのでしょう

さらには、ネパール国内の食肉事情も影響していると言います。

小林
ネパール国内では今も牛肉を食べる習慣が一般的にありません。だから来日して日本のおいしい牛肉を食べて魅了される人も多いのでしょう。それに肉メニューって、外食っぽい華やかさがあるので、そういうのも新鮮なんでしょうね。ちなみに同じネパール人でも民族によって肉への距離感は差異があり、マジョリティであるバウン族・チェトリ族に比べると、もともと水牛肉をよく食べるネワール族などの他の民族は、牛肉にも抵抗を感じない人が見られます。まさにこの店も、店主さんはネワール族です

ラッシーの新しい楽しみ方を大発見!?

そんな話をしながら、ふと小林さんが不思議なドリンクを飲み始めました。パッと見は、真っ白なラッシーですが……。

小林
実はこれ、甲類焼酎をラッシーで割った“ラッシー焼酎”なんです。まろやかな味わいで、最近すっかりハマっていまして
ラッシー焼酎
甲類焼酎をラッシーで割った“ラッシー焼酎”。メニューにはありませんが、頼んだらつくってくれるはず!

そこで小林さんにならい、田嶋と編集Mも魅惑のラッシー焼酎を試してみることに。いざ飲んでみると……。

編集M
たしかに、ラッシーの甘味とまろやかさが前面に出ていて、飲み物としてうまい
田嶋
というか、アルコールをほとんど感じずグイグイいけてしまい、これは相当にキケンなドリンクだ!(笑)
小林
基本的にラッシー焼酎はインネパ店のメニューにありませんが、頼めばたいていつくってくれます。ただ作り手もそんな飲み物は飲んだことがないのでしょう、ラッシーの比率がまったく安定しないので、私は比率を指定してオーダーしています。今のところラッシー4に対して、甲類焼酎を6くらいの比率がベストかなと思っていますが、今後も最適解を追求していきたいですね(キリッ)

ちなみにここローカル渋谷は、パーティ感あるメニューだけでなく、オーセンティックなネパール料理がしっかりあるところも大きな魅力です。メニューにはチョイラ、セクワ、スクティなど名だたるネパールつまみがひと通り揃い、どれも本格派でおいしいです。この日頼んだのは、スパイシーな惣菜と、平たい干し米・チウラがセットになった“カジャセット”。

カジャセット
カジャセット。
田嶋
大豆のスパイス和えや野菜のアチャールが辛くて味が濃く、それをサクサクのチウラと共に食べると、刺激的な味と触感をあわせ持つ“サイコーつまみ”が爆誕します!

さらにはもう1品、締めにネパール焼きそば“ミックスチョウミン”をオーダー。

ミックスチョウミン
ミックスチョウミン。
編集M
ケチャップベースの親しみある味わいながら、これまたいい感じに辛くて味が濃い。締めと言いつつ、ラッシー焼酎をもう1杯いただきます(笑)

ファイヤーモモで盛り上がり、BBQメニューで肉への渇望を満たし、酒はビールから自家製モヒート、ラッシー焼酎まで自由自在。そして、魅惑の本格ネパール料理で締める(安心してください、本格的ダルバートもちゃんとあります!)。渋谷の真ん中には、そんなインネパ飲みのパラダイスがありました!

案内人

小林真樹さん

インド・ネパールの食器や調理器具を輸入販売する有限会社アジアハンター代表。インド亜大陸の食に関する執筆活動も手掛け、著書に『日本のインド・ネパール料理店』(阿佐ヶ谷書院)、『食べ歩くインド』(旅行人)などがある。http://www.asiahunter.com/

店舗情報店舗情報

ローカル渋谷
  • 【住所】東京都渋谷区道玄坂2‐28‐2 MMビル2階
  • 【電話番号】03‐5422‐3482
  • 【営業時間】11:00~22:30(L.O.)
  • 【定休日】無休
  • 【アクセス】JRほか「渋谷」より徒歩3分

文:田嶋章博 写真:小林真樹、田嶋章博、編集部

田嶋 章博

田嶋 章博 (ライター、編集者)

1976年、神奈川県生まれ。ファッション誌の編集を経て独立。ライフワークとしてカレーの食べ歩きと時々自作をしながら、WEBメディア、雑誌でカレー関連記事を執筆。 都内および近郊のダルバートを食べ歩いた「東京ダルバートMAP」を展開中。