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手づくり「豆板醤」選手権③発酵食品の知識と経験を活かすライターS

手づくり「豆板醤」選手権③発酵食品の知識と経験を活かすライターS

料理家・荻野恭子先生から手づくり豆板醤を習った取材陣は先生から復習を課され、それぞれがマイ豆板醤づくりに取りかかっていた。普段から発酵食を親しむライターSは、カメラマンIや編集Sから遅れること約1カ月、ようやく腰を上げた。

手づくり豆板醤の工程はいたってシンプル

世界各国の「おふくろの味」に精通し、自宅でも、保存食から調味料まで手づくりを実践する料理研究家の荻野恭子さん。現在、好評発売中の『四季dancyu2022夏』では、夏にぴったりな手づくり調味料2つを習っています。その一つが、そら豆からつくる豆板醤。「豆板」とはそら豆のこと。そら豆をゆでて小麦粉をまぶし、発酵乾燥をさせてそら豆から発酵臭がしてきたら、唐辛子と塩、水を混ぜて熟成させます。材料も少なく、プロセスもそう多くありませんが、やっぱり大事なポイントが。詳しいレシピは誌面でご紹介していますが、今回はこの撮影に携わった取材陣がそれぞれの自宅で手づくり豆板醤に挑戦。その体験記をご紹介しましょう。最後に、先生に味わってもらって誰の豆板醤が一番おいしいか評価してもらいました。
最後の挑戦者は、ライターS。控えめな彼女はいつも通り、何も言わずに撮影現場から立ち去りました。作戦はあるのでしょうか。

ムックページ
手づくり豆板醤のレシピは『四季dancyu2022夏』に掲載しています!ぜひ挑戦を。

ライターSの豆板醤日記

●月▼日
いかんいかん、のんびりしてしまった。
カメラマンIと編集Sがすでに豆板醤の仕込みを終えていることを知り、焦って近所のスーパーへそら豆を買いに行く。今回のレシピでは、そら豆をゆでているけれど、そういえば荻野先生が、現地では蒸したりもすると言ってたっけ。2人とはちょっと違う本場っぽいことをやってみようと、鞘から出したそら豆をいそいそと蒸籠に並べる。が、うっかり変色するまで蒸し過ぎてしまった。薄皮を剥くときから豆が崩れてしまうし、これ本当にうまくできるんだろうか……。嫌な予感が頭をよぎりつつ小麦粉をまぶし、ザルに広げ、ラップを被せた。

空豆

●月▽日
日当たりと風通しのよい窓辺に置いていたら、発酵臭らしきものを感じられないまま、すでに乾き始めている。予定では、ねっとり粘ってくるはずなんだけどな。そら豆に手水をパッパッと振りかけて軽く湿らせ、発酵を試みる。ラップはまだ被せたまま。

●月●日
朝から雨でジメジメ。ザルに近付くとプーンと、昨日とは明らかに違う匂い。ちょっと酸っぱいような、でも腐敗臭とは違う。水キムチをつくったときの香りと似てる。手で混ぜると少し粘った感触もある。いいぞいいぞ。ラップをはずして、上からもザルを被せた。

ザル

●月○日
朝起きてザルを取ったら、そら豆のところどころに白い斑点が。カ、カビだ……。少し発酵を攻めすぎたかしら。慌ててネット検索し、本場四川の豆板醤づくりのブログなどを探してみると、一面白カビに覆われるまで発酵させている画像を発見。もしかして、これもあり?チーズも白カビがおいしいし、もうちょっと置いてみるか。まだ乾いてないし。

●月☆日
今日は朝から終日留守にしなくてはならない。早朝、ザルを取ってみると、ぎゃー! 昨日の白に加えて青カビも!(画像は自粛)。これはもう、失敗だよね……。急いでいたので、とりあえずそのまま外出した。夜に帰宅し確認すると、一日中、窓も締め切っていたせいか青カビがさらに繁殖。ああ、そら豆さんごめんなさい。涙を飲んで処分。我が汚部屋の常在菌にも問題があるのかもしれない……。

●月★日
気を取り直し、新たなそら豆で再チャレンジ! 今回は蒸さずに気持ち硬めにゆでた。緑色も美しいし、小麦粉もきれいにまぶさってテンションが上がる。今度こそ成功しますように!

そら豆

●月□日
再チャレンジ2日目。緑色がきれいに残っていて、最初のものとは状態がまったく違う。やっぱり最初は蒸し過ぎがダメだったのかな。小麦粉が溶けて全体に粘ってきて、匂いもうっすら出てきてる。夜までラップをかけておき、寝る前にはがしておいた。

●月■日
3日目。昨晩より匂いもしっかり出てきて、まだ全体に粘っているけど、小さな皮片などはカラッとしてきた。土砂降りの雨だけど、このままうまく乾いてくれるといいな。

そら豆

●月♦日
4日目。半分くらい乾いてきた。けっこう匂いもある。腐らないよう祈るばかり。

そら豆

●月♦日
5日目。午前中、出がけに確認するとほとんど乾燥している。もう大丈夫かな。夜まで外出してしまうから、唐辛子と合わせるのは明日にしよう。

●月×日
6日目。よっしゃ、しっかり乾いてる! ちょっと乾きすぎなくらい? 赤唐辛子(中国産)は荻野先生のものより少し細かめに粉砕し、塩、水と混ぜ合わせた。塩は先生と同じ、青ヶ島のひんぎゃの塩。

材料
混ぜる

●月♡日
7日目。途中で2回くらいかき混ぜつつ丸一日置いたら、すっかり水分を吸い込んでいい感じ。消毒した瓶に詰めた。入り切らなかった分は、取材時に先生から分けてもらった豆板醤と混ぜて小瓶に詰めた。呼吸ができるよう、蓋はしっかり閉めずに、ゆるくね。

●月♠日~
毎日、底からかき混ぜて様子をみる。徐々に全体がなじみ、かき混ぜることでそら豆も細かくなってきているよう。1週間から10日で冷蔵庫へ入れるというレシピだけど、明らかに発酵が進んでいるはずの2人に追いつきたい一心で、20日間ほど常温に置いてから冷蔵庫へ。味は悪くないし、うまくできた!と思いたいけれど、なんだかこれ、色が白っぽくない?かすかな不安が頭をよぎる。

四季dancyu2022夏
四季dancyu2022夏
A4変型判(120頁)
2022年6月8日発売/1,100円(価格)

文・撮影:鹿野真砂美

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。