マスターズドリーム。それは、生産性や効率ではなくただ、うまさだけを追い求めた醸造家たちの夢のビールだ。贅沢な素材、手間暇惜しまぬ製法を注ぎ込んだザ・プレミアム・モルツの最高峰。多重奏で濃密な味わいのこのビールには、やはり、手間暇惜しまずつくられた心尽くしの料理が似合う。あの名店のカウンターで、あの老舗のテーブルで、自慢の美味とともに傾ける琥珀色の一杯。名店のこだわりと伝統を詰め込んだ素晴らしい料理と出合い、互いに響き合うことで料理もビールも、一層の輝きを放つ。
名は体を表す―――ダイヤモンド麦芽は、ヨーロッパ全体で生産される麦芽のうち、わずか4%。その名前と数字が稀少性を証明している。そして、ダイヤモンドという名の通り、その麦芽は硬い。上質で深いコク、うまみを持つ麦芽であるが、硬い構造のため、じっくりと煮出さなければ、魅力は引き出せないという。マスターズドリームは、そんなダイヤモンド麦芽を贅沢に使用。手間暇、そしてコストを惜しまず、その上質な麦芽の持ち味を最大限に引き出している。
「江戸前ではなく、全国前です」と胸を張るのは店主・佐藤賀津廣氏。詳しく聞いてみると、その言葉は重い。「味のピークに、各地の産地から直接引っ張る」。それはつまり、全国の産地に自らの足で繋いだパイプがあるということ。20年以上前から時間を見つけては各地の漁港を訪れた。それを繰り返すことで、“全国前”の礎を築いたのだ。また、佐藤氏は「手間を食べに来てもらっている」と言い切るほど、手をかける。コースには料理と握りが30種ほど。そのすべてに細やかな仕事が施されているのだ。連日予約で満席という人気も納得の名店だ。
北新地の名店「カハラ」で18年、独立して「川添」を開いて22年。合計40年のキャリアの末にたどり着いたのは、厳選した食材の持ち味を、だしと少しの調味料で引き出す料理。昆布や野菜のだしが根底を支える料理は、第一印象としては和食に近く見えるが、食べてみるとその印象は一変。緻密な計算で欧州、中華、地中海などさまざまな手法を織り交ぜながら、味や食感に変化をつけている。「身体に負担がかからない、食べやすい料理が理想」と、店主・川添雅嗣氏。薄味だが記憶に残る骨太な味わいは、そんな川添氏の技術と経験の結晶だ。
「野田岩」の鰻のタレは、さっぱりとしている。下町の濃厚なタレと比べると、少し控えめな存在感だが、鰻と合わせてみると、その意味がわかる。それは、脂のうまみ、身の甘味、皮目の香ばしさを、このタレが極限まで引き出しているから。酸味を抑えた鰻ざく、口中でふわりと広がる煮こごりなど一品料理も、芯となる理念は同様。いかに鰻をおいしく味わうか。創業以来二百余年、それだけを追求し続けてきたのだ。「伝統を守りつつ、いかに時代に合わせるか」。五代目当主・金本兼次郎氏の言葉は、今なお進化を止めぬ名店の矜持として息づいている。
※紹介しているお店のデータは2022年4月末時点のものです。予告なく変更する場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
ストップ! 20歳未満飲酒・飲酒運転
文:鴫原夏樹 撮影:大谷次郎、相澤 正(寿司栄)、福森クニヒロ(川添)、原 務(野田岩 銀座店)