今回は、「みりん」さんから頂いた蓋問題について答えます。好き嫌いがひどい、料理が下手、メニューを決められない、食べ過ぎる……。dancyu編集長・植野が、食いしん坊倶楽部会員のあらゆる「食の悩み」にお答えします。
人間は高度な動物なので複雑な行動を複数同時にこなすことができます。以前ある町中華に入ったら、マンガを読みながらケータイで話をしながら時折ティッシュで鼻をかみながらラーメンを食べている若い男性がいました。お行儀が悪いなどというレベルを超越して感動的ですらありました。これはなんの役にも立ちませんが、レベルが上がると複数の料理を同時につくれる料理人や手足で異なるリズムを取れるドラマーなどになれるかもしれません。
ところが、そんな高度な機能を持ちながらも、簡単なことができなかったりします。それも全員ができないのではなく、人それぞれできないことが違ったりするからややこしい。他人が見たら「なんでそんなことができないのか」と思われてしまいます。
実は僕も「歯を磨いているときに水道の栓を閉められない」という機能不全に陥ったことがありました。歯を磨くときにコップに水を入れますよね? で、水が入れば水道を止めて歯を磨きますよね?(磨き終えたらコップの水で口をゆすいで捨てて、ゆすぎ足りなければまたコップに水を入れますよね)
ところが、コップに水を入れた後も、水道から水を出したままにしてしまっていたのです。水はずっと流れるまま。もったいない。もったいないと頭でわかっていても止められない。なぜか自分でもわからない……。
いかんなぁ、と思いながらも水を止めることができなかったのですが、ある日を境にきちんと止めることができるようになりました。なぜか。近所の水道工事の影響か、その日は水の出が悪く、栓を全開にして歯を磨いていました。すると水道工事が終了したのか、急に勢いよく水がドバっと! 水が撥ねてびしょ濡れに……。その日以来、必要な水を出すと栓を閉めることができるようになったのです。
さて本題。みりんさんのご主人も、自分でも理由がわからずフタを閉められないのですよね。ということは、フタが開いていることによって失敗したり、痛い目に遭えばできるようになるかもしれません。
たとえば、ご主人が料理をしたり食事をする前に、調味料のフタを最初から全部外してしまう。使おうと思ったらいきなり塩や胡椒や醤油や七味などがドバっとこぼれて散乱します。これを体験すると「フタをきちんと閉めないとひどい目に遭う」という擦り込みができて、きっと使い終えたときもフタをするようになると思います。きっと。
そういえば、かつてはサウナに置いてある整髪料などにはフタがありませんでした。盗難防止のためだったのですが、初めてそれを見た二十歳の頃、頭いいなぁ、と妙に感心した覚えがあります。
イラスト:横山寛多
人間は高度な動物なので複雑な行動を複数同時にこなすことができます。以前ある町中華に入ったら、マンガを読みながらケータイで話をしながら時折ティッシュで鼻をかみながらラーメンを食べている若い男性がいました。お行儀が悪いなどというレベルを超越して感動的ですらありました。これはなんの役にも立ちませんが、レベルが上がると複数の料理を同時につくれる料理人や手足で異なるリズムを取れるドラマーなどになれるかもしれません。
ところが、そんな高度な機能を持ちながらも、簡単なことができなかったりします。それも全員ができないのではなく、人それぞれできないことが違ったりするからややこしい。他人が見たら「なんでそんなことができないのか」と思われてしまいます。
実は僕も「歯を磨いているときに水道の栓を閉められない」という機能不全に陥ったことがありました。歯を磨くときにコップに水を入れますよね? で、水が入れば水道を止めて歯を磨きますよね?(磨き終えたらコップの水で口をゆすいで捨てて、ゆすぎ足りなければまたコップに水を入れますよね)
ところが、コップに水を入れた後も、水道から水を出したままにしてしまっていたのです。水はずっと流れるまま。もったいない。もったいないと頭でわかっていても止められない。なぜか自分でもわからない……。
いかんなぁ、と思いながらも水を止めることができなかったのですが、ある日を境にきちんと止めることができるようになりました。なぜか。近所の水道工事の影響か、その日は水の出が悪く、栓を全開にして歯を磨いていました。すると水道工事が終了したのか、急に勢いよく水がドバっと! 水が撥ねてびしょ濡れに……。その日以来、必要な水を出すと栓を閉めることができるようになったのです。
さて本題。みりんさんのご主人も、自分でも理由がわからずフタを閉められないのですよね。ということは、フタが開いていることによって失敗したり、痛い目に遭えばできるようになるかもしれません。
たとえば、ご主人が料理をしたり食事をする前に、調味料のフタを最初から全部外してしまう。使おうと思ったらいきなり塩や胡椒や醤油や七味などがドバっとこぼれて散乱します。これを体験すると「フタをきちんと閉めないとひどい目に遭う」という擦り込みができて、きっと使い終えたときもフタをするようになると思います。きっと。
そういえば、かつてはサウナに置いてある整髪料などにはフタがありませんでした。盗難防止のためだったのですが、初めてそれを見た二十歳の頃、頭いいなぁ、と妙に感心した覚えがあります。
イラスト:横山寛多