SakeBaseが今年育てたオリジナル酒用の山田錦。今年から取り組んだ越智(おち)地域の稲刈りも10月中旬に無事終えて、出荷への準備を進めていった。が、順風満帆とはいかず……(上の写真は、籾摺りを終えて玄米になった状態)。
千葉市緑区土気(とけ)の2地域で稲作をしているSakeBase。3年前に耕作放棄地の開墾からスタートした小山谷津(おやまやつ)地域の稲刈りは、すべて手刈りで9月中に終了。今年から耕作を始めた越智(おち)地区の田んぼは40aと小山谷津の2倍の面積にも関わらず、コンバイン(稲刈りをしながら脱穀をする機械)での稲刈りが可能だったため、わずか2日で稲刈りを終わることができる……はずだった。
ところが10月19日の稲刈り当日、途中まで刈ったところでなんと、コンバインが田んぼの中央で動かなくなってしまった。にっちもさっちもいかず、残りは泣く泣く手刈りすることに。
今年春、この越智の田んぼを借りることになったとき、コンバインや耕運機、乾燥機、選別機など稲作に必要な機械類も農家さんからまとめて安く譲ってもらったのだが、中古のせいかたびたび故障が起き、大事なところで最後の大トラブルが起きてしまった。“自前主義”を掲げ、なんでもまずは自ら修理を試みるSakeBaseだが、ここはプロの修理屋さんを呼ばねばならない。
脱穀した籾は、作業の拠点としている越智の農家前に運び、乾燥機にかける。収穫したての米は水分27~30%。これを15%以下に乾燥させないと等級検査で等級がつかず、特定名称酒を名のれないことになってしまう。乾燥後の安全をみて、水分13.5%を目指して乾燥機にかけていく。乾燥機は熱風で乾燥する仕組みで、300kgの籾を乾燥させるのに約12時間かかる。
10月21日、乾燥させて保存したおいた籾を、籾摺り機にかける。機械が動き始めて15分ほどたった頃だろうか、不具合が起きた。入れた籾が摺られずにそのまま出口から出てくる。摺った籾殻を入れるために機械に供えつけていた青い大きなメッシュ袋にも、一向に籾殻はたまっていかない。
これは困った。自力で何とかしようとしても無理そうだ。石井叡(あきら)さんが日頃から農作業についていろいろ相談している農家の石井勉さんに電話をしたところ、ありがたいことにすぐに駆けつけてくれた。
ベテラン農家の石井さんが来訪してからも難儀すること小一時間、なんとか籾摺り機が再び動き始めた頃には、秋の陽は傾き始めていた。機械から出てきた玄米は、選別機にかけて紙の米袋へ。この後、お世話になっている成田の農家さんに高性能の色彩選別機を借りて再度選別を行ってから、検査員立ち合いのもとで等級検査を。そしていよいよ奈良県の油長(ゆうちょう)酒造へ出荷される。
昨年のSakeBaseの収穫米は450kg、今年は越智の田んぼが増えたこともあって1040kgの見込みとなる。昨季はSakeBaseの米は麹米に使われたのみで、精米歩合80%の純米酒となったが、今季は精米85%での仕込みが決定しているそうだ。念願の「全量SakeBase米での仕込み」が達成されるだろうか。
写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)