山田錦の本格栽培2年目の今年、9月から10月にかけて、農家酒屋SakeBaseは順次、稲刈りを行ないました。今回はその報告の後半です。
SakeBaseは現在、千葉市緑区土気(とけ)の2地域で稲作をしている。3年前に耕作放棄地の開墾からスタートした小山谷津(おやまやつ)地域は、田んぼの形がまちまちで機械が入りにくい場所が多いため、すべて手刈りでの稲刈り。田んぼ担当の宍戸(ししど)涼太郎さん、石井叡(あきら)さんが9月末の1週間をかけて、順次刈り取っていった。この週は毎朝6時に稲毛区にある自宅を出て、車で約1時間かけて田んぼへ。暗くなるまで作業をして、また1時間かけて20時に西千葉の店に戻る生活だった。
撮影日の9月27日は月曜で定休日だったため、休日返上で、ふだんは店舗に立っている土屋杏平(きょうへい)さんや、同店でアルバイトを始めた新メンバー候補の橋村蒼(そう)さんも加わって、フルメンバー4人体制での稲刈りに(上のメイン写真は、稲刈りをする土屋さん。お尻のSakeBaseマークが光っている)。
小山谷津地域の田んぼの中でも、本日刈る田んぼは特に順調に育ったという。「この田んぼに関しては肥料を蒔きませんでした。また、苗を大きくしてから植えたのがよかったのかも」(宍戸さん)。さらに「最初の除草をすごく丁寧にやりました」とのこと。米も酒も、一年一作。なにが正解か今はわからなくとも、今年のトライが来年の指針になっていく。
刈った苗は軽トラ(愛称「働く車」)の荷台に積み、ある程度の量になったら、車で15分程度のもう一つの拠点・越智(おち)地域へ石井さんが順次、輸送していく。昨年の脱穀は近隣の農家さんから借りた小型のハーベスター(脱穀機)で行なったが、今年からは廃業した越智地域の農家さんから譲り受けた中古のコンバイン(田んぼを走行して収穫しつつ脱穀もする農業機械)という強い味方がある。今年は小山谷津の米も、その越智の大型コンバインで脱穀するのだ。
コンバインの前部から収穫した稲を入れると、中で脱穀して籾(もみ)と藁に分けられる。籾は袋にたまり、藁は後部から出てくる仕組みだ。本来ならコンバインは田んぼの上で収穫しつつ脱穀をするのだが、本日は動かさずに固定して、脱穀機の機能だけを使う。
脱穀する際、同時に藁をこまかく砕く機能もコンバインには備わっているのだが、その機能も使わない。なぜなら、長いままの藁が必要だからだ。この無農薬の藁を干して、来年は、店舗でカツオの藁焼きを提供するという計画がある。また、藁の芯から線香花火をつくるという楽しみな企画も、動き出している。
刈った籾はその都度乾燥機にかけ、10月の越智地域の収穫分も合わせて籾がたまったら、脱穀機と選別にかける仕事が待っている。収穫したての籾の水分は27~30%。これを15%以下にしてこそ、等級検査で「3等米」以上の認定が取れるのだ。3等米以上にならないと、純米酒の表示もできないという。次回は、乾燥、籾摺り、選別の工程をお伝えしよう。
写真:山本尚明 文:里見美香(dancyu編集部)