広尾にある炭火焼屋「ブラッチェリーア ロトンド」ではシンプルな手法で肉の旨味を引き出し、味わわせてくれます。
まるでふらりと居酒屋にでも行くような気軽さで「今日はTボーンステーキでも」と気負わず出かけられる店だ。
しかしカジュアルながらも、ここは炭焼き屋(=ブラッチェリーア)。炭火焼きというシンプルな手法で肉の旨さを引き出し、味わわせるのだ。もちろんTボーンステーキも然り。30分以上時間をかけ、丁寧に焼き上げる。
使う肉はオーストラリア産。仕入れ先に細かく仕上がり具合を伝え、エイジングしてもらっているのだとか。その身質は、脂に頼らない赤身の旨さが凝縮。噛むことで、赤身の酸味が旨味へ変わる口中調味の醍醐味を堪能できるのだ。もちろん芳しい炭の香りも効果絶大で、食べ疲れることがない。
その対極にある一皿が、ミディアムレアに仕上げる馬肉上ハラミのタリアータ。「焼くというより温める感覚」という小出シェフの言葉通りに火入れされたそれは、柔らかくなめらかな舌ざわりが、なんとも官能的だ。
このクオリティーながら、懐事情にもやさしい価格設定なのは、特筆モノ。
「イタリアと同じ感覚で提供したかったんです。日常的にTボーンを食べられる店にしたかった」とは、オーナーの丸原さんのお言葉。その思い、ありがたく「拝食」します!
文:中川節子 写真:平松唯加子
※この記事の内容はdancyu2018年10月号に掲載したものです。