滝本農場のある北海道赤井川村は、200万年前の大噴火で生まれたカルデラの村。冬の2メートルの豪雪と氷点下20度の厳寒が害虫を淘汰し、夏の30度の暑さと、昼夜の大きな寒暖差が作物を美味しくする。化学肥料・農薬不使用の畑で完熟するにんにくは、見た目は無骨でも、味と香りと力も違う。
滝本農場の主力作物は有機JASのアスパラガス。アスパラガスの収穫シーズンはともかく忙しい。結果として、にんにく畑の草取りの人手がなく、にんにくは雑草と格闘して育つ。粘土質の固い土地に根をはり、赤井川の豊かな日照が、強靭な滝本さんのにんにくを生む。
地中のにんにくの玉が大きくなると、土にひび割れができる。それから7月中旬までさらに完熟させ、葉が枯れるまで収穫しない。完熟すると色が悪くなり、玉割れも出るが、味は素晴らしくなる。一般の小売では見た目が大事だから、完熟にんにくは出回らないが、食べてみたら、滝本さんのにんにくの違いを感じるはず。
農薬と化学肥料に頼らず、雑草との戦いに勝利して、昼夜の大きな寒暖差で糖度を上げ、玉が割れるほど育った有機JASにんにくは持っている力が違う!
収穫して間もないにんにくは水分が多く、カビが生えやすい。風通しの良い冷暗所で保存すれは、2〜3ヶ月は美味しく食べられるが、そうした冷暗所がない場合は、冷蔵庫の野菜室がおすすめ。長期保存は冷凍が確実。
にんにくの皮をむき、厚手の鍋に入れ、鷹の爪を加え、にんにくが被る量のオリーブオイルを注ぎ、弱火で煮る。熱くなったら火を止め、冷めたら、また火を入れる。何度か繰り返すと、とろとろ食感のオイル煮になる。
そのまま食べても美味だが、潰して、鷹の爪と一緒にパスタと和えると、簡単に濃厚なペペロンチーノ的な味わいを楽しめる。肉料理や魚料理の付け合わせにも良い。
古代エジプトのピラミッド建設労働者に配られたにんにく。強い抗菌作用もある。コロナ禍の夏を乗り切るおすすめの食材だ。
文:(株)食文化 萩原章史