東京・神楽坂にある「ぼん・りびえーる」のシュークリームはとても軽やか。甘さがパッと広がり、すっと消えていくような、いくつでも食べられるシュークリームなのです。
キレのあるクリーム。パティシエの吉川靖浩さんは、自身のカスタードをそう表現する。
食べると、その意味がよくわかる。口に入った瞬間にクリームのコクや旨味、甘さが花火のようにぱっと広がり、飲み込むとすっときれいに消えていくのだ。
吉川さんの理想のクリームにとって、“粘り”は大敵。粘りのもととなるグルテンが小麦粉から出ないよう、極力練らず、力を入れないことに神経を遣っている。そのため、卵黄はスポンジケーキをつくるときのようによく泡立てて、サックリと粉と合わせる。さらに、袋を握って圧をかけなくても済むよう、広めの口金を使ってクリームを絞るのだ。
「余韻を残す、ぽってりしたクリームが好きな人もいるだろうけど、自分がおいしいと感じる味を貫きたい」。そう語る彼の口調も、クリームと似てキレがある。
文:吉田彩乃 写真:竹之内祐幸
※この記事の内容はdancyu2019年4月号に掲載したものです。