東京・九段下にある「欧風銘菓ゴンドラ」のシュークリームは無骨な見た目。しかし、一口食べると甘く華やかな香りが広がります。
こんがりと焼ききったシュー皮の中には、どっしりとした黄色いカスタード。粉糖も何も飾らない、無骨な見た目だ。だが、一口食べると、卵が効いた濃厚でしっとりとした味わいと、鼻の先まで抜けていく甘く華やかな風味に魅了される。
ふくよかで印象的な香りを生み出すのは、ブランデーを軸にした一子相伝のカクテル。創業以来、それぞれのお菓子合わせてブレンドした洋酒で香りづけすることを、店の個性としてきた。シュークリームにも、隠し味程度にほんの少しだけ含ませて、一度食べると忘れられなくなる“「ゴンドラ」の味”を生み出しているのだ。
だから、わざわざ買いに行きたくなる。九段下に開業して87年。近所だけでなく遠方からも、ここにしかない味を求め、今日もたくさんの人がやってくる。
文:吉田彩乃 写真:竹之内祐幸
※この記事の内容はdancyu2019年4月号に掲載したものです。