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店主の技に身を任せる "焼かない"焼肉屋「富吉」|本気で旨い東京焼肉⑨

店主の技に身を任せる "焼かない"焼肉屋「富吉」|本気で旨い東京焼肉⑨

葛飾の堀切菖蒲園の「富吉」では焼肉屋に必ずあるはずのものがありません。それは「焼き台」。ここでは店主が絶妙な焼き加減に仕上げてくれるので、ぼーっとしながら最高の美味しさを体験できる稀有な焼肉店です。

ここは肉好きの番外地

ミノサンドは和牛一頭から0.5~1kgしか取れない。真白い脂の部分がとろプル食感の正体だ。
ウルテ(牛の軟骨)600円。頭蓋骨に響くゴリゴリの歯ごたえが、ホルモン狂の心をわし掴み!

「焼かない焼肉屋」。このスタイルこそが、「富吉」のアイデンティティーである。
「富吉」は焼肉屋でありながら、カウンターに焼き台がない。肉を焼くのは客ではなく、店主の福島和明さん。汗だくになりながら、厨房の小さなロースターで焼いて出してくれる。自分で焼かなくていいから、ハイボールで喉を潤しつつ、カウンターに肘をついてぼーっとしながら待てばいい。
この店で一番人気のホルモン、ミノサンドが運ばれてきた。さすがはプロの焼き加減、とろとろプルプルの脂が口の中で溶けていく。肉にからんだ甘辛いコチュジャンダレが白飯を誘う。もちろん、ハイボールも誘う。一人で食べて1,500円で釣りがくる。店主は「注文が重なると大変で」と困った顔をするけれど、「焼かない焼肉屋」は肉好きにとっての番外地。独りぼっちも酒飲みも、どんな人も銀の皿の旨い肉が受け止めてくれる場所だから。

ミノサンドとは、牛の第一胃袋であるミノの特に脂が多い部位。にんにくや胡麻油を効かせたタレをからめ、強火で何度も返しながら脂が溶ける寸前まで焼く。650円。片面だけ焼いて余熱で火を通す“ちょい焼き”の牛ロース800円も後をひく旨さ。
ここがニクい!
1階のU字のカウンター席に座ったら、客は注文してただ待つのみでOK。店主の福島さんが絶妙な焼き加減で提供してくれるのだ。
1980年開店。堀切ハイボール270円、生ビール550円。2階は自分で焼く通常の焼肉屋スタイル。

店舗情報店舗情報

富吉
  • 【住所】東京都葛飾区堀切3‐8‐9
  • 【電話番号】03‐3691‐3243
  • 【営業時間】17:00~23:00(L.O.)2階は~22:00(L.O.)
  • 【定休日】水曜(祝日の場合は営業)
  • 【アクセス】京成線「堀切菖蒲園駅」より1分

文:佐々木香織 写真:本野克佳

※この記事の内容はdancyu2017年10月号に掲載したものです。