レストランで食事をしたとき、誰かの手料理を食べたとき、どうリアクションしたらいいか困ることはありませんか?好き嫌いがひどい、料理が下手、メニューを決められない、食べ過ぎる……。dancyu編集長・植野が、食いしん坊倶楽部会員のあらゆる「食の悩み」にお答えします。
結論から言います。ぴーちゃんは正真正銘の食いしん坊です。
全部一律に好き!なんでも美味しく食べられる!というのは、誰にでもできることではありません。持って生まれた才能かもしれません。
そもそも、人は生まれた時には鋭敏な舌を持っていますが、ほとんどの人は成長するに従って味覚が鈍感になっていきます。だから、子供の頃は食べられないものが多かったのに、大人になったらいろいろ食べられるようになった、ということになるのです。
ただ、舌が鈍感になっていく代わりに、頭脳が発達し、経験値が増えていきます。「これは甘いはず」「香ばしさがある」「日本酒に合う味だ」といった脳内変換機能や、「先週食べた焼肉より旨い」「今まで食べたポテサラの中で一番旨い」という相対比較機能が強化されるのです。
だから、ぴーちゃんのようになんでも美味しく食べられる人は、人間という動物的には高度な域に発達していると言えます。
そして、衝撃的に美味しいものはわかるのですから、バカ舌でも味覚障害でもありません。
(ちなみに、近年の若者に多い亜鉛不足などが原因による味覚障害で、なんでも平板な味に感じてしまう、という場合は話は別です。こういう場合は、白米、カシューナッツ、胡麻、納豆、豚肉、卵、チーズなどをバランスよく食べるか、病院で治療を受けましょう)
大丈夫、心配することはありません。美味しいと思ったら「美味しい!」というのが料理人に対する最大の誉め言葉です。
とはいえ、出てきた皿すべてに同じように「美味しい!」と言うと、シェフは「本当に美味しいと思ってくれているのだろうか?」とちょっと不安になるかもしれません。お互いのちょっとした不安を解消するためには、「美味しい」は最後に取っておきましょう。食事の途中は最小限にしておいて、最後に「ああ、美味しかった!」と叫べばいいのです。
さらに、振り返ってみて、たとえば一番たくさん食べたものについて「○○が美味しかった!」と言えば、シェフも安心するでしょう。「一番たくさん食べたもの」でなくても「最後に食べたもの」「一番高そうだったもの」「最も可愛かったもの」などと自分勝手な基準を決めておけばいいのです。最後に食事の内容をふりかえっているうちに、その中で一番印象に残ったものを思い浮べて「美味しかった!」と言えるようになるかもしれません。そうなれば、上司もまたご馳走してくれるはずです。
あまり美味しくないと思ったものでも完食、というのも素晴らしいことです。そんなことで「お腹に入ればなんでもいいんでしょ?」と言われたら、「食材に罪はないですから」と言ってあげましょう。
料理を誉めるのには勇気がいります。簡単に誉めると、その程度の味覚かと思われてしまいそうで怖いのです。だから、美味しいと思っても「うん、まあまあかな」なんて周りを見ながら中途半端な反応をします。実はぴーちゃんのように、なんでも「美味しい!」と言える人が羨ましいのです。その点、とにかく食を楽しむ食いしん坊は素直でいられます。グルメより食いしん坊の方が楽なのですよ。
だから、正々堂々と高らかに言いましょう、「みんな美味しい!」と。
イラスト:横山寛多
結論から言います。ぴーちゃんは正真正銘の食いしん坊です。
全部一律に好き!なんでも美味しく食べられる!というのは、誰にでもできることではありません。持って生まれた才能かもしれません。
そもそも、人は生まれた時には鋭敏な舌を持っていますが、ほとんどの人は成長するに従って味覚が鈍感になっていきます。だから、子供の頃は食べられないものが多かったのに、大人になったらいろいろ食べられるようになった、ということになるのです。
ただ、舌が鈍感になっていく代わりに、頭脳が発達し、経験値が増えていきます。「これは甘いはず」「香ばしさがある」「日本酒に合う味だ」といった脳内変換機能や、「先週食べた焼肉より旨い」「今まで食べたポテサラの中で一番旨い」という相対比較機能が強化されるのです。
だから、ぴーちゃんのようになんでも美味しく食べられる人は、人間という動物的には高度な域に発達していると言えます。
そして、衝撃的に美味しいものはわかるのですから、バカ舌でも味覚障害でもありません。
(ちなみに、近年の若者に多い亜鉛不足などが原因による味覚障害で、なんでも平板な味に感じてしまう、という場合は話は別です。こういう場合は、白米、カシューナッツ、胡麻、納豆、豚肉、卵、チーズなどをバランスよく食べるか、病院で治療を受けましょう)
大丈夫、心配することはありません。美味しいと思ったら「美味しい!」というのが料理人に対する最大の誉め言葉です。
とはいえ、出てきた皿すべてに同じように「美味しい!」と言うと、シェフは「本当に美味しいと思ってくれているのだろうか?」とちょっと不安になるかもしれません。お互いのちょっとした不安を解消するためには、「美味しい」は最後に取っておきましょう。食事の途中は最小限にしておいて、最後に「ああ、美味しかった!」と叫べばいいのです。
さらに、振り返ってみて、たとえば一番たくさん食べたものについて「○○が美味しかった!」と言えば、シェフも安心するでしょう。「一番たくさん食べたもの」でなくても「最後に食べたもの」「一番高そうだったもの」「最も可愛かったもの」などと自分勝手な基準を決めておけばいいのです。最後に食事の内容をふりかえっているうちに、その中で一番印象に残ったものを思い浮べて「美味しかった!」と言えるようになるかもしれません。そうなれば、上司もまたご馳走してくれるはずです。
あまり美味しくないと思ったものでも完食、というのも素晴らしいことです。そんなことで「お腹に入ればなんでもいいんでしょ?」と言われたら、「食材に罪はないですから」と言ってあげましょう。
料理を誉めるのには勇気がいります。簡単に誉めると、その程度の味覚かと思われてしまいそうで怖いのです。だから、美味しいと思っても「うん、まあまあかな」なんて周りを見ながら中途半端な反応をします。実はぴーちゃんのように、なんでも「美味しい!」と言える人が羨ましいのです。その点、とにかく食を楽しむ食いしん坊は素直でいられます。グルメより食いしん坊の方が楽なのですよ。
だから、正々堂々と高らかに言いましょう、「みんな美味しい!」と。
イラスト:横山寛多