カメラマンが、いつかまた食べたい料理
イタリアのファーベ、ラザーニャ、鳩のグリル|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

イタリアのファーベ、ラザーニャ、鳩のグリル|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの遠藤素子さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

遠藤素子さんが食べに行きたいのは――。

雑誌の取材で3ヶ月に一度イタリアに行くようになって2年半が経ちました。毎回違う州に行くので、この2月に訪れたロンバルディアでちょうど10州目になります。

11州目は5月末に行く予定でしたがもちろん中止、年内どころかいつ行けるようになるのかまだまだ予想もできません。

しかしついに6月3日、感染予防措置を講じることを条件に、全ての移動制限が解除され、活動が再開されました!完全に元に戻るにはまだ時間がかかると思いますが、イタリアの底力を見せてくれることでしょう。

今回私がもう一度食べに行きたいお皿はなんだろう?と考えた時に思い浮かんだのがこのイタリアの色々な土地で食べた料理でした。約200回の食事の中でも度々ふと思い起こす料理が何品かあり、その中から今回前菜、プリモ、メインと3皿を選びました。どれも現地でしか食べられないものです。お皿と共にシェフの笑顔やお店の雰囲気、その街や村の空気もセットです。

あぁイタリア行きたいなあ~。

イタリア・マルケ「Ristorante La Graticola」のファーベ・ディ・フラッテローザのハーブオイル漬けのブルスケッタ

イタリア・マルケ「Ristorante La Graticola」のファーベ・ディ・フラッテローザのハーブオイル漬けのブルスケッタ
マルケ州北部フラッテローザ村にあるリストランテで食べた、ファーベ・ディ・フラッテローザ。村の名前が付いたこの空豆は、長い歴史を持つ伝統的なもの。この宝石の様な空豆のビジュアルにまず一目惚れ。日本の空豆より小ぶりだが甘味が感じられてとても美味しかった。この他にも空豆粉を混ぜたパスタ、タッコーニや、空豆を潰さず中に入れたウサギのポルケッタなど、ファーベ・ディ・フラッテローザ尽くしが楽しめる。

イタリア・リグーリア「Ristorante Albergo Bar Da Giovanni」のラザーニャ・アル・ペスト

イタリア・リグーリア「Ristorante Albergo Bar Da Giovanni」のラザーニャ・アル・ペスト
リグーリア州サンフルットゥオーゾの入江にあるリストランテで食べた、ラザーニャ・アル・ペスト。ペストとはペースト・ジェノベーゼの現地での呼び名。透ける様な薄さのラザーニャ生地とこの店自慢のペストを何層にも重ねたもので、表面積はかなりの大きさだが、ツルンとした滑らかな生地と香りの強すぎないペストであっという間に食べきれてしまう。パスタは重くてあまり量が食べられないのだが、これはとても軽いのでお代わりしてしまったほど。ペースト・ジェノベーゼにおいて後にも先にもこれを超えるものには出会えないだろうと思っている。古いイタリア映画に出てきそうな小さく美しい入江を見下ろす崖の上にある老舗のレストラン。目の前の海で採れた新鮮な魚介類も最高。ここは仕事で行くべき場所では無い。午前中は海で泳いでランチに冷えた白ワインとラザーニャ・アル・ペスト。午後はのんびり昼寝と読書。ああ夢が膨らむ。

イタリア・トスカーナ「Antico Ristorante Pestello」の鳩のグリル

イタリア・トスカーナ「Antico Ristorante Pestello」の鳩のグリル
トスカーナ州キアンティのリストランテで食べた「鳩のグリル」。峠道にいきなり現れる石造りのリストランテは、中に入るととても居心地の良いアットホームな空間。中は案外広く、席数も多い。この規模で料理を作るのはほぼマリア・ピーアさんひとり(たまにお母さんが手伝う)というのに驚いた。マリアさんは朗らかに柔らかく笑う素敵な人だ。彼女の料理は素朴でシンプルでほっとする。そしてとてつもなく美味しい。私にとって実はこのキアンティが初イタリアだったのだが、マリアさんの料理を食べた瞬間「ああ、本物の美味しいイタリアンというのはこういうことなのだ……」と痛烈なショックを受けたのだった。迷いに迷って選んだ一皿はこの鳩のグリル。鳩は薪釜で焼いているのでとてもジューシー。少し濃い目のソースも手が止まらなくなる。そして忘れてはいけない付け合わせのリンゴ。これがびっくりするほど美味しいのだ!何がどうなってこんなに美味しくなっているのか分からないので、是非とももう一度確認したい。

写真・文:遠藤素子