カメラマンが、いつかまた食べたい料理
オスマニアビスケット、たまねぎ料理、キノコ料理|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

オスマニアビスケット、たまねぎ料理、キノコ料理|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの岡村昌宏さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

岡村昌宏さんが食べに行きたいのは――。

インド・ハイデラバード「ニムラーカフェ」のオスマニアビスケット

インド・ハイデラバード
インド・ハイデラバード
インド・ハイデラバード「ニムラーカフェ」のオスマニアビスケット
インド中南部の都市ハイデラバード、その街のシンボルである美しい建物のチャールミナール(Charminar)は、ほぼ街の中心に位置している。チャールミナールはパリの凱旋門のようにロータリーの中心にドーンと建っていて、今回紹介する「ニムラーカフェ」はその建物のほぼ目の前、昼間はリキシャでごった返すチャールミナール通りに面しているお店だ。カフェといえば聞こえが良いが、アジアにありがちな路面店的な雰囲気。店内に入ると、さほど広くない店内のテーブルは満席で、注文用のカウンターでは、オヤジ達が行列を作っている。知らない土地の知らないお店に入ったらまずは他のお客さん達を観察する事から始める。テーブル席ではオヤジ達がチャイをすすりながら何やら素手のまま手に持って食べている。よく見ると食べているのはビスケット、どうやら店の名物らしい事は間違いない。しかしオヤジ率が高い!さらに観察していると、ビスケットは店の奥で焼いているらしく、鉄板に乗せられたビスケットが香ばしい香りと一緒にひっきりなしに店内へ運ばれてくる。これは食べずにはいられない。真似していくつか頼んでみる、その中でも一番人気はオスマニアビスケット。薪釜で焼かれたビスケットは口に入れてみるとサクサクで、味はシンプルだがミルクたっぷりな風味は想像していたよりはるかに美味しい!甘ったるいチャイと一緒に食べると、一枚、二枚と思わず何枚も食べたくなる。さらに手みやげには箱詰めで買って帰る事もできる。もちろん、箱一杯に買ってホテルで楽しんだのは言うまでもない。家の中で籠りがちな日々の中で、旅の事を考えていたら、何故だかゴチャゴチャしたインドの雑踏の中で食べたオスマニアビスケットを思い出した。またあの焼きたてのビスケットを食べたくなった。

シンガポール・ボタニックガーデン「コーナーハウス」のたまねぎ料理

シンガポール・ボルタニックガーデン「コーナーハウス」
シンガポール・ボルタニックガーデン「コーナーハウス」
シンガポール・ボルタニックガーデン「コーナーハウス」
シンガポール・ボルタニックガーデン「コーナーハウス」のたまねぎ料理
シンガポール中心地から少し離れた、世界遺産でもある「シンガポール植物園」の中にある一軒家レストラン「コーナーハウス」。植物園の入り口でタクシーをおりて、植物園の中へ。レストランがある雰囲気は全くない、熱帯ならではムワッとした湿気の多い空気のなかをしばらく歩いていくと、白いコロニアル建築の建物が見えてくる。こちらのレストラン、元々は植物学者のE.J.H. Corner氏の屋敷を改装した一軒家のレストランだ。植物園の中にあるだけあって、緑に囲まれていてとても素敵な雰囲気。コロニアルな雰囲気タップリの店内へ、中に入ってさらに2階へ進む。案内されたテーブルは広いガラス窓が目の前にあって、窓の外は一面の緑、まるでゴーギャンの絵の様な熱帯の景色が広がる。こんな素敵なテーブルでどんな美味しいお料理が楽しめるのかドキドキしてくる。野菜中心のコース料理の中でも一番惹かれたのが、4種類のたまねぎ料理。ピューレ、タルト、スープ、チップス。4種類のどれも魅力的だが、仕事柄、料理の盛り付けやビジュアルも気になるところ。特にチップスは透き通るほど薄くスライスされていて思わずじっくりと眺めてしまう。食べてしまうのがもったいないくらいの不思議な魅力を感じた。それ以外の3品もそれぞれ魅力的で、たまねぎをそのまま料理の容器に使ったピューレは、フタをあけるとトリュフが蓋をする様にのっていて、その下のたまねぎのピューレと温泉玉子をあえていただく、こちらも悶絶ものである。石のお皿にペタンとはりつく様に盛り付けられているのはオニオンタルト、南部鉄器の様な急須の中にはスープが入っている。勿論、他のお料理もとても美味しく盛り付けも美しい料理ばかりで大満足。味ヨシ、料理の盛り付けヨシ、外の景色に落ち着いてたコロニアル建築ヨシ。今の騒動が収まったら、「コーナーハウス」の料理を旅の目的にシンガポールへ旅するのも良いかもしれない。

東京・代々木八幡「シャントレル」のキノコ料理

東京・代々木八幡「シャントレル」のキノコ料理
代々木八幡神社にほど近い自分のスタジオから、歩いて数分のところにミシュランの星を取り続けているフレンチレストラン「シャントレル」がある。キノコ好きの自分にとっては最高のお店である。キノコが店名の由来になっているくらいだから、当然、美味しいキノコを使ったメニューも豊富で、季節毎に変わるコースメニューでは美味しいキノコを使ったお料理を楽しむ事ができる。こじんまりとした店内は、シェフのこだわりがつまっている。オープンキッチンからは、全てのテーブルが見えるように作られていて、入口から、お店の奥までつながるカウンターテーブルは、このお店の一番の特徴。個人的な特等席はそのカウンター席。そこから、手際よく料理をするオーナーシェフ中田雄介さんの様子をうかがいながらお料理をいただくのが好き。まず頭に浮かぶ料理の一つは、シェフの定番の一品でもある「うずらのワイルド詰めセップ茸のソテーあえ」、味はもちろんのこと、弾力のある食感とほどよい香りのセップ茸は僕の大好物である。さらに、真ん中でドーンとベーコンに巻かれているうずらの中にはワイルドライスのピラフとフォアグラが詰め込まれている。赤ワイン、シェリービネガーを煮詰めた甘辛いソースを絡めた味わいはとても繊細だ。見た目はワイルドだが、手間暇かかった贅沢な料理である。その他にも春であればキノコの女王モリーユ茸を使った「仔牛のロースト、モリーユ茸の煮込みソース」や秋にはフランス産のキノコたっぷりの「甘鯛と森のキノコのデュグレレ風」など、季節それぞれにキノコ料理を楽しむ事ができる。もう何年も通い続けている「シャントレル」、そしてこんなに近いのに、この騒動で食べに行くことが出来ないなんとも歯がゆい状況の今だが、今回紹介したセップ茸のシーズンである秋には余計な心配などせずに、あのカウンター席に座って中田シェフの美味しい料理を楽しめる様になっていることを願うばかりである。

写真・文:岡村昌宏