カメラマンが、いつかまた食べたい料理
のり弁、ブレックファースト、子羊のグリルと地場野菜|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

のり弁、ブレックファースト、子羊のグリルと地場野菜|カメラマンが、いつかまた食べたい料理

カメラマンの富貴塚悠太さん。今、食べに行きたい、会いに行きたい料理はなんですか?と聞くと……。

富貴塚悠太さんが食べに行きたいのは――。

東京・三宅島「土屋食品」ののり弁

東京・三宅島「土屋食品」ののり弁
釣りキャンプで訪れた三宅島、「絶対食べなきゃね!」と先輩に連れられ辿り着いたのは、「土屋食品」さんという小さな商店。店内には全国から集められたワンカップ酒(しかも純米酒)が並んでいたりと、ただの島のスーパーではない雰囲気。 意気揚々とお弁当を探すも、あれ、無い。さすが地元の人気商品のようで、売切れでした。 と、落胆したのも束の間、陳列棚の奥では従業員さんがせっせ、せっせと、なんとご飯の上に岩海苔を敷き詰めているではありませんか。 いわゆるフライの乗った「のり弁」を想像していた僕は面食らいました。 しかもおかずは申し訳程度、面積の殆どが岩海苔という、見た目びっくりなお弁当です。 さあ、晴れて購入できました。港に移動し、地べたにあぐらをかいて、頂きます。 食べた瞬間の、口の中いっぱいに広がる磯感が忘れられません。一度食べたら病みつきの美味しさです。 島らしい暖かい日差しを浴びながら、夢中で頬張り、ビールで流し込みました。

カナダ・ソルトスプリング島「ウィステリア・ゲストハウス」の毎日違うブレックファースト

カナダ・ソルトスプリング島「ウィステリア・ゲストハウス」の毎日違うブレックファースト
カナダ、バンクーバーからフェリーでおよそ1時間半、点在するガルフ諸島の中でも一番大きい島、ソルトスプリング島。 滞在中のB&Bとしてお世話になった「ウィステリア・ゲストハウス」は、ロケーションが素晴らしいのは勿論のこと、ブレックファーストが有名です。 ニューヨークの名だたるホテルでペストリーシェフの経験を積んだべバリーさんが、毎朝、2皿の素敵な料理を振る舞ってくれます。 ゲスト達は皆、同じテーブルを囲むので、各々、知らない者同士、どこから来たの?今日の予定は?などと会話が弾むことに。 ひと段落したころ、真打、べバリーさんの登場。朝ごはんの始まりです。 1皿めには庭で採れたベリーやプラムを使ったパンケーキ。鮮やかに盛り付けられたプレートを目にした時の、ぱあっと明るくなった皆の顔が印象的でした。 写真は2皿めの焼いたサーモンのグラブラックスにエッグベネディクトなど。 島内には卵や野菜の無人販売所があったり、オーガニック食材などを販売するサタデーマーケットが毎週あったりと、食料自給の意識が高く、食材の鮮度が素晴らしいです。 この朝ごはん、なんと毎日違う料理がでてきます。翌日からは目覚めと同時にワクワク、幸せな1日の始まりです。

山形・庄内「アル・ケッチァーノ」の子羊のグリルと地場野菜

山形・庄内「アル・ケッチァーノ」の子羊のグリルと地場野菜
「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフには何度となくお世話になっていて、庄内へ行く度、この土地にはなぜこんなにも美味しい食材で溢れかえっているのかをご教示頂いています。 普通のレストランだったら全部配送するところ、奥田シェフは庄内平野をぐるぐる、自ら食材を探しに行ってしまいます。 それに同行させて頂くと、早朝から漁船に同乗させてもらったり、崖で作る赤カブ畑を見に行ったり、山や川に分け入っては野草、山菜を摘んたり、まさにフル稼働です。 レストランへ戻るやいなや、早速ディナーの準備です。確かにこれからが本業ではあるけれど、毎度いつ休むのか心配になるほどの働きぶりに、ただただ頭が上がりません。。 数ある奥田シェフのスペシャリテの中でも僕が好きなのは、子羊のグリル。だだ茶豆を食べて育った子羊は、柔らかくてほんのり甘い。 付け合わせの野菜は山形の「だし」風ラタトゥイユにミズ(山菜)のフリット。シンプルに、お塩だけで頂きます。 絶妙な火入れや素材の切り方、食べ合わせなど、そこには計算し尽くされたプロの技術があるのですが、 まず何よりも庄内という場所があるからこその味、それはシェフが一つひとつ丁寧に探し回った集合体で、ここに来ないと食べられない料理なのだと実感します。

写真・文:富貴塚悠太