「あゆみ食堂」が諏訪に移住した理由。
「あゆみ食堂」のはじめの一歩。

「あゆみ食堂」のはじめの一歩。

東京から諏訪に移住した大塩あゆみさんが開いた「あゆみ食堂」。決断の日から一年を経て、ついに迎えた初営業。果たして、どんな一日になるのだろう。

オープンまで、あと30分。

長野県諏訪市で「あゆみ食堂」が初営業を迎えようとしていた。
厨房の中では、店主の大塩あゆみさんと東京から手伝いにきた井上翠さんが、鍋をグツグツ、コトコト。
「あゆみさんから、諏訪で食堂を開くって聞いたのが一年前ぐらいかな。今日まであっという間だったわ」
客席の準備を終えたあゆみさんのお母さん、大塩もとみさんが感慨深そうに呟いた。

あゆみさん
「あゆみ食堂」店主の大塩あゆみさん。2018年まで、東京を拠点に料理研究家として活躍していた。

店を開くには、細かな契約や登録が必要。たったの一年で物件を探して、内装をつくり変えてオープンするのは簡単ではなかったはず。
「決めてからが本当に早かったの。あゆみさんは昔から気になったことや、やりたいことにはどんどん入り込んでいく性格だったから」と、目尻を下げるお母さん。

土鍋
開店時間が近づくにつれて、店内はごはんが炊き上がる香りで満たされていった。
鍋
ランチメニューの「もちもちごぼうフリット」。見習い時代のあゆみさんが、師匠に教わったレシピでつくった。

あゆみさんから異郷の地で店を開くと聞いて、お母さんはどんな気持ちだったのですか?
「不安はなかったですよ。むしろ東京にいるより良いなと思いました。都会は刺激も多いけど、立ち止まれないじゃないですか。自分の生まれ故郷じゃなくても、あゆみさんの周りには、素敵な仲間がたくさんいるしね」
いままで助けてくれた人たちの気持ちに応えていこう。みんなを笑顔にする料理をつくり続けていこう。
あゆみさんが店を開くと決めて、そんな言葉を交わしたそうだ。
お母さん、初営業を前にして自分のことのように嬉しそう。

店内
大塩もとみさんは「あゆみ食堂」のオープン準備のために7日前から泊まり込んでいた。2日後には職場がある下田へ帰るそうだ。

「12時だし、オープンしようか」と声をかけるあゆみさん。
富士山型の看板を外に出して、初営業がいよいよ始まる。

店内
寝る間も惜しんで考えた初めてのランチメニュー。

店を訪れてくれた人が午後も元気に過ごせるように。

看板を出すと、店の外にはすでに開店を待っている人たちがいた。
店内へと案内され、厨房にいるあゆみさんに祝福の言葉をかけている。最初の客は、内装を手掛けた「リビルディングセンター」のスタッフたちだった。
その後も、人の流れは途切れない。オープンして15分後には、20席ほどあった店内が満席になった。

行列
「あゆみ食堂」の門出を祝う人たちが駆けつけていた。
店内
慣れた手つきでランチメニューを用意するあゆみさん。何度もシュミレーションしたのだろう。

あゆみさんは、忙しそうにひらりひらりと舞っている。
初めてのランチメニューは、店を訪れてくれた人が午後も元気に過ごせるようにという想いを込めて、“定食”をイメージしたそうだ。
茶碗にこんもり盛られたピカピカの白米と、湯気が立っている味噌汁、長野県の食材を中心につくられた惣菜が、客席へと運ばれていく。

料理
右側の小鉢から時計回りに「ジャガイモのそぼろ煮」「さんまの竜田揚」「もちもちごぼうフリット」「ナスのきび酢マリネ」「ちんげん菜、人参、えのきのナムル」。味噌汁にはかぼちゃとしめじが入っている。

ランチメニューを夢中で頬張る人たちは、老若男女。酒蔵の蔵人さん、近所に住むおばあちゃん、裏手にある高校から昼休みに抜け出してきた男子学生三人組、SNSで「あゆみ食堂」がオープンすることを知って、他県から飛んできたという女性二人組もいた。

客
炊き立てのごはんを頬張る。隣接する茅野市でつくられた自然栽培の米だ。
客
午前を乗り切った体に、温かい味噌汁が沁みわたる。
客
男子学生たちの間でも「あゆみ食堂」が噂になっていたそうだ。
客
念願の「あゆみ食堂」の料理に笑みが溢れる。

客席に座りきれないほどの人が訪れ、入店待ちになる場面もあった。13時30には、十分に用意していたはずのランチメニューがすべて売り切れ。
「あゆみ食堂」の初営業は大盛況の中、幕を閉じた。

スタッフ3人
「あゆみ食堂」が諏訪市での第一歩を踏み出した。

――つづく。

店舗情報店舗情報

あゆみ食堂
  • 【住所】長野県諏訪市元町5‐12
  • 【電話番号】0266‐75‐2720
  • 【営業時間】12:00~14:00(L.O.)、土、日は夜の営業もあり(完全予約制)
  • 【定休日】水曜、木曜、金曜
  • 【アクセス】JR「上諏訪駅」より10分

文:河野大治朗 写真:阪本勇

河野 大治朗

河野 大治朗 (編集者)

2018年9月「塚田農場 浅草店」店長から、dancyuのweb編集部で働きはじめる。自分の好奇心を大切に、気になることはやってみる。大好きな食の魅力を伝える編集者になるため修行中。特技は羊の解体。趣味はきのこ狩り。