辻褄が合ってなくても構わない。性的な表現に制限もなければ、イリガールも、アンモラルもまかり通る。どちらかと言えば、正当性を認めることの方が難しい。夢とは実に摩訶不思議なもの。でも興味深い。そして面白い。シンクロニシティと言われると、ちょっと困るけれど。
何かの窓口があって、衝立のようなものを挟んでふたりの人間が会話をしている。いや、窓口や衝立ではなく、テーブルをはさんでいるのかもしれない。
ふたりのうちのひとりはボクである。ふたりは相談のような交渉のようなことをやっている。何かを交換しようとしている。カジュアルではあるがこざっぱりとした清潔感のある服装で、ふたりの関係性はセクシュアルな雰囲気からは遠い。にもかかわらずボクの性器は硬く勃起している。ボクは彼と(ひょっとして彼女?)と○○しようとしているのだ。そして確かにそれが○○であると確信しているのだが、隣の部屋の娘の目覚まし時計が鳴り続けていて、ああ、これは夢なんだな、とハッキリとわかる。
そろそろベッドから出ようか、もう少し○○していたい気もするが、それが身体的な快楽なのかといえばそうでもない。その場所はその夢の中でハッキリと特定できたし、さまざまなことがもっとハッキリしていたのだが、起きてしまうとそのリアルさが失われてしまいそうでグズグズしているうちに本当に目が覚める。
トイレに行き、コーヒーを淹れたりしている間に、その夢のほとんどのディティールを忘れてしまう。しかし、ボクは確かに○○していた。それは漢字2文字で表される何かなのだが思い出せない。翻訳、通訳。何かが違う。変身、交代。似ているが違う。何だろう?
さすがにそんなことを1日中考え続けるわけにもいかず仕事に出かけるのだが、頭の片隅から○○が離れることはない。その日は、ある雑誌のために俳優の仲野太賀さんを撮影するのだが、スタイリングとヘアメイクの仕上がりを待つ間、スタジオエビスのロビーで若いスタジオマンと話しているときも、交換じゃなくて、貿易じゃなくて、何だっけ、あれは?と気になって仕方がない。
恵比寿1丁目の喫茶室ルノアールとびっくり寿司の間の道を、1月の晴れた日の澄んだ斜めの光が差し込むこじんまりした交差点まで太賀くんやスタイリストの石井くんと歩き、久し振りにフィルムカメラで、キャノンの1眼レフにズミルックス50mmを装着して36枚撮りのフィルム2本分の撮影をしている間は、もちろんすっかり○○のことは忘れてしまっているのだが、撮影が終わっておつかれさまの挨拶をしてひとりになるとまた漢字2文字の○○のことを考える。その日は月曜日だが成人の日で振り袖姿の若い女性の帯を見ながら、入替、修正、変動、転移、反転。うーん、近いんだけどなあ。何だっけ?
――明日につづく。
文・写真:大森克己