山の音
サミー・デイヴィス・Jrはサントリーホワイトがお好きでしょ。
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サミー・デイヴィス・Jrはサントリーホワイトがお好きでしょ。

印象深いCMを思い浮かべると、子どもの頃に遡る。ビデオがなかった時代。録画もなければ、早送りもない。リアルタイムで番組もCMも観る。いまにして思えば、テレビにきちんと向き合ってたのかもね。だから、記憶が鮮明なのかな。番組の主題歌もCMで流れた歌も口ずさんだり、とにかく動きを真似したり。気の抜けないテレビ体験だったんだな。

デレデレと週に5日くらい通ってしまいそうである

ローラ、レオナルド・ディカプリオ、吉高由里子、井川遥、小雪、小栗旬、國村隼&伊藤歩、大原麗子、岡本太郎、野坂昭如、開高健、日野皓正、根津甚八、谷村新司、黒澤明、ロッド・スチュアート、オーソン・ウェルズ、ポール・アンカ、サミー・デイヴィス・Jr、 キッドクレオール&ザ・ココナッツ、ヨー・ヨー・マ、ヨゼフ・ボイス。
思いつくままに挙げてみたウィスキーのCMに出ていた(出ている)有名人の方々。ショーン・ペンが酒を飲んでいる映画のことを考えていると思い出されてきたCMいろいろ。吉高さんとか小雪さんがカウンターの向こうにいる店があったら、そりゃ行ってみたい。デレデレと週に5日くらい通ってしまいそうである。

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でも自分的には古い70年代、80年代のCMがやっぱりグッと来ますね。というのは単に懐かしいとか昔は良かった、ということではなくて、自分がまだ酒を飲めなかった年令なので、ウィスキーのCMっていうのは実用性ゼロ、ファンタジー100%だったわけですね。ウイスキーは酒の中でも特に高級なイメージがあって、自分が想像していたカッコいい大人の有り様のひとつの形だったんだろうな。
しかし、考えてみればウィスキーの味というものを言葉にしたりヴィジュアライズしたりするのは難しいわけで、実際のところほとんどのCMで、その味がどうこうとは語っていない。せいぜいのところ芳香が奥深い、みたいなことである。まあ、酒というものがそもそも生活に絶対的に必要なものではないので、究極の無意味、かつ洒落、みたいなところに行き着くのかも、ですね。酒のCMというものは。

ただ飲んでご機嫌な感じ、それだけである

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つらつらと挙げた中で無意味&お洒落ナンバーワンはどれか、と考えて記憶を辿ってみるとサミー・デイヴィス・Jrのサントリーホワイトかな。画面ではラテンの香りのするアフリカ系の男が「chiki chiki chick'on ♫」とスキャットしながらウィスキーのオン・ザ・ロックを自らつくって飲むだけである。ただ飲んでご機嫌な感じ、それだけである。酒を飲めない小さな子どもだった自分もこれ見てウィスキーって飲んでみたい、と確かに思った記憶がある。あまりにも楽しそうで。モノマネもやりましたね。「チキ、チキ、チコーン 3通り ♫」。
ちょっと検索してみるか、、、とあったあった。こりゃ凄い(https://www.youtube.com/watch?v=yyN-aHtAVzs)。人生こうありたいと思わせる。まあ、ただの陽気な酔っぱらいのオッサンで、そこが良いんだよな。
ショーン・ペンはCMにはちょっと似合わないですね。マジすぎる&怖すぎる。

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――如月につづく。

文・写真:大森克己

サミー・デイヴィス・Jrはサントリーホワイトがお好きでしょ。

大森 克己(写真家)

1963年、兵庫県神戸市生まれ。1994年『GOOD TRIPS,BAD TRIPS』で第3回写真新世紀優秀賞を受賞。近年は個展「sounds and things」(MEM/2014)、「when the memory leaves you」(MEM/2015)。「山の音」(テラススクエア/2018)を開催。東京都写真美術館「路上から世界を変えていく」(2013)、チューリッヒのMuseum Rietberg『GARDENS OF THE WORLD 』(2016)などのグループ展に参加。主な作品集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。YUKI『まばたき』、サニーデイ・サービス『the CITY』などのジャケット写真や『BRUTUS』『SWITCH』などのエディトリアルでも多くの撮影を行っている。

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