「かれー屋 伊東」のカレーが食べたくなってる。
だから「かれー屋 伊東」は愛される。

だから「かれー屋 伊東」は愛される。

「かれー屋 伊東」は富山で40年以上続くカレー専門店である。父と母、そして息子3人が中心となって切り盛りする。家族経営なのだ。そして、ここにしかないカレーがある。「ヤサタマ」。この唯一無二のカレーを目指して、富山はもちろん、市外から県外からも客が訪れる。おいしい合言葉は「ヤサタマ」なのだ!

営業マンの華麗なる転身?

「ヤサタマコロ」
道中、迷いに迷った「ヤサタマ」の続きは「かれー屋 伊東」に入ると、あっさり決まります。
「どれを食べようか悩んでるんです」
そう社長の伊東慎二さんに告げると、返ってきた答えは至極明快。
「コロッケがいいさ」

玉ねぎとマッシュルームが入った薄焼き卵をカレーにオン。特製のソースとマヨネーズで仕上げた“やさたまコロッケカレー”870円。

なぜ、コロッケか。
その理由は「かれー屋 伊東」が歩んできた歴史とも重なります。
1977年、伊東さんは富山市内の小泉町交差点近くに「インデアンカレー 小泉店」をオープン。そう、当初はお隣の石川県金沢市にある「インデアンカレー」のフランチャイズだったんです。
「私、営業マンでした。脱サラしてカレー店を始めたのが27歳のとき」
そう聞いて指折り数えると、えっ、古希の手前ですか?
伊東さん、ガハハと笑って「計算上はそうなりますね」。年齢を感じさせない若々しさに、ちょっとびっくり。
「カレーのことばかり考えて40年。楽しいんだと思います」
とは言え、辛い(からいじゃないですよ)こともありますよね?

「かれー屋 伊東」を創業して、いまも元気に厨房に立つ伊東慎二社長。大らかなで懐の深い人柄は実に魅力的なのです。

「ない、というか、鈍感なもんでね」と、冗談か本気か定かではない伊東さんの言葉に、横で(苦)楽を共にしてきた奥さんの素子さんが、笑っています。本当ですかと訊ねれば、そうねぇという感じで、あの頃を振り返る素子さん。
「本当にカレーのことばかり考えているんですよ。店を始めたばかりのときは、お客さんがあまりやって来ないわけです。そうすると時間はあるから、どうやったらカレーがおいしくなるかをずっと研究してるんです。楽しそうにね」
うんうんと頷く伊東さん。「ずっとその繰り返しだわ」。続けて「その中で生まれたのが、ヤサタマ」。

野菜玉子からヤサタマへ。

「ヤサタマ」に合わせて自家製のソースが、またたまりません。伊東社長曰く「普通だけど特別なソース」。

1979年、伊東さんは「ヤサタマ」の元祖となる「野菜玉子」を思いつきます。
「野菜と言っても、玉ねぎとマッシュルーム、ピーマンしか入ってなかった。それをたまごで包んでみたわけ。まかないで食べてみたけど、カレーに合うかどうかはわからなかった。スパゲッティで食べた方がおいしかった気もしたんだわ」
再び、ガハハハと笑う伊東さん。
「わからないもので、これが意外とお客さんのウケが良くてね。しばらくすると常連のお客さんたちが『ヤサタマ』と呼ぶから、メニューも『ヤサタマ』にしたわけです。そうしたら、みなさん『ヤサタマ』『ヤサタマ』と頼むんですね。『ヤサタマ』のお陰で、ここまできたんですよ」
やっぱり、伊東さん、楽しそうだ。

「ヤサタマ」に使うたまごはMSサイズ2個と決まっているんです。
玉ねぎとマッシュルームをフライパンで炒めるところからスタート。
たまごを溶いて、野菜とからめて薄焼き卵をつくります。
ごはんを盛り、カレールウをかけたら、ごはんを覆うように薄焼き卵をのっけます。

名物がひとつ誕生した。「もうひとつ名物が出来たら自分の店を持とうと思っていたんです」と、伊東さんは言います。
そう、それが「クリームコロッケです」。


――つづく。

店舗情報店舗情報

かれー屋 伊東
  • 【住所】富山県富山市大泉町1‐2‐9
  • 【電話番号】076‐425‐1888
  • 【営業時間】11:00~20:30(L.O.)、土曜、祝日は11::00~15:00(L.O.)、17:00~20:30(L.0.)
  • 【定休日】日曜
  • 【アクセス】富山地鉄「西中野停留所」より7分、「広貫堂前停留所」より8分

文:エベターク・ヤン 写真:小原太平

エベターク・ヤン

エベターク・ヤン (編集者)

江部拓弥と同一人物であると思われる。『牯嶺街少年殺人事件』のエドワード・ヤン監督と名前が似ているが、まったく関係ない。