おかわり、ありませんか？

昼どきのピークが過ぎた時間、馴染みがない土地で、ひとり。

さて、どこでお昼を食べようか。とりあえず、あっちをうろうろ、こっちをふらふらと、なんとなく目星をつけながら、歩く。もちろん、当てはない。特段、食べたいものもない。それなのに、なんでもいいというわけでもない。だから、決まらない。

ぐるりと回って、いいなぁと思った定食屋へ踵を返す。決め手は、暖簾がきれいだったことかな。がらがらと引き戸を開けて、後ろ手で扉を閉めようとすると、すぐ後ろからおじさんが入ってきた。閉める役割はおじさんへ託して、店の中へ。

カウンター席とテーブル席で、10人も入ればいっぱいになりそうな小さな店構え。僕は一緒に入店したおじさんと向かい合って、4人掛けのテーブル席にふたり。カウンター席はいっぱいでしたね。

白衣を纏った若いお兄さんが、僕とおじさん、それぞれにメニューを手渡して「ランチはライスのおかわり無料です！」と、気持ちのいい笑顔を見せる。

そうなのかぁ。せっかくだけど、おかわりはしないと思うなぁ。最近、そんなに食べられないんですよ。でもね、相変わらず太っている。どちらかと言えば、大きくなっている。まぁ、そんなことは気にしないで、ハンバーグ定食を頼む。

目の前のおじさんも「ハンバーグ定食」とぽつり。続けて「ごはんは大盛りにしてください」。
えっ。
カウンター席に座る人たちからも「えっ」が聞こえた気がしましたよ。

お兄さんが笑顔で返す。「おかわり、無料なんで」。そうですよね。
おじさんが真顔で言う。「おかわりはいらないので、大盛りにしてください」。なんでなの？

この話もつづきます。