1日は24時間。誰にでも平等。どう過ごすかという点においては、不平等かな。充実した1日もあれば、ままならない1日もある。通り過ぎていく1日もあるけれど、忘れられない1日もある。確かなことは、同じ1日はひとつもないということ。すべて自分次第なんだろうね。そしてまた、今日が始まる。
遠くで飛行機の音。燃えないゴミの日、壜と缶がぶつかり合う。犬が吠え揺れてベッドが軋む。地震かな。隣の部屋の目覚ましのスヌーズ、汗ばむTシャツ、クルマが走る、波の音。唸るクーラーの室外機。7時15分。蛇口をひねる摩擦。シャワーの湯が肌に当たってはねる。肌を伝って下に滴り落ちる水。浴室の中の反響。タオルが頭皮と擦れて響く。世界水泳、記者会見、きょうの運勢、テレヴィジョン。山羊座、みずがめ座、そして魚座。コーヒー豆が切れていて、紅茶を淹れる。ミルクと砂糖を入れてかき混ぜる。パソコンを立ち上げる。マッキントッシュ。きょう渋谷で撮影する予定のバンドの曲のPVをYOUTUBEでチェックする。『One Rizla』。農夫がカメラに語りかけ、ギター・ギター・ギター。牧場で羊と戯れる5人の白人の若者たち。画面の中の強い風。ランカシャーの曇り空。新浦安の窓の外は明るく湿気を帯びた南風。梅雨は明けたのだろうか。
「山形新幹線『つばさ122号』は奥羽本線(山形線)内でのカモシカの衝突の影響で、遅れがでています。」。地下の半蔵門線のホームから地上に上がると渋谷には日が射している。東急の高架に沿った坂道は、滑り止めの◯印の反復で午前中の繁華街は配達のクルマが行き交う。パチンコ屋、ラブホテル、ガールズバー。どの音が何の音で、あの音はその音だ。サロンパス、TSUTAYA、大盛堂書店。交差点の看板たち。Shameという名のバンドと駅に直結して上に延びる高層ビル、ホテルの5階のラウンジで待ち合わせ。恥。残念。ジョシュ、エディ、ショーン、そしてふたりのチャーリー。彼らは南ロンドン、ブリクストンからやって来た。サンドウィッチとコカコーラとビールと一緒にインタヴュー。自分はカフェラテ。通訳って不思議だな。その人が日本語でしゃべったことを、べつのこの人が英語で話す。あの人が英語で話したことが、またこの人によって日本語になる。Shameの友人のバンドで、Sorryというバンドがいるらしい。恥と、ごめん。◯印が反復する坂道にたたずむ5人のポートレートを撮影し、彼らはフジ・ロックフェスティバル出演のため苗場に向かった。お腹がすいた。午後2時近くなっている。自分は恵比寿に向かって定食屋「なかよし」で「鶏つくねと夏野菜のピリ辛白ごまスープ」を食べる。この後、広尾のスープ屋のインテリアを撮影するのだが、2時間ほど時間がある。さてどうしよう。
――明日につづく。
文・写真:大森克己