
4月25日と26日の2日間に渡り、東京・八重洲ミッドタウンで今年初めて開催された「酒屋が選ぶ焼酎ふぇすてぃばる 2026」。「酒屋が選ぶ焼酎大賞」に連動したイベントで、北海道から沖縄までの78酒販店協賛のもと、九州・伊豆諸島を中心とした74蔵元が出店しました。 最終回となるイベントレポート「その3」では、“お湯割り”の表現を独自の感性で展開する、宮崎「國酒 松」の小松山龍辰さんをご紹介。美しい所作、銘柄ごとにアレンジした割り方。お湯割りの可能性が無限大に見えて、ワクワクします。
宮崎市で食通が集う路地裏“ウラタチ”に店を構える「國酒 松」。まるでステージのようなL字カウンターで、宮崎の焼酎を中心にさまざまな和酒、炭焼き料理、おいしいだしの効いた和食が味わえる店です。店主、小松山龍辰さんの焼酎に対する解像度の高さはずば抜けていて、銘柄ごとに最適な飲み方を研究。なかでもお湯割りは、温度や手順を自在に変えて繰り出される多彩なお湯割りは、茶釜で沸かした湯を使うなど所作も美しく、“湯割道”と呼びたくなる完成度。

ワインや日本酒のように、注ぐだけで飲めるというものではないということが、焼酎を面白くする大切なポイントなのではないかと小松山さんは話します。
「揚げたての天ぷらっておいしいじゃないですか? 天ぷら職人は、エビだったらこの温度と揚げ具合にすると決め手、完璧な食べ頃に仕上げてお客さんにサーブしてくれる。焼酎のお湯割りやソーダ割りも同じで、私たちが銘柄に合った割り方で、できたてをお出しすることができる。その場でベストな飲み頃のものを飲んでいただけるのは、焼酎の良いところだと思います」。
普段は宮崎の焼酎のみを扱っている小松山さん。今回のイベントでは奄美大島の黒糖焼酎や、麦焼酎など、いつもとは違う焼酎に向き合ったそうです。さっそく彼の美しきお湯割りを体験しましょう!

奄美大島、西平酒造の「加那(かな)」は、トロピカルフルーツのような華やかな香りの黒糖焼酎。
「普通にお湯割りにすると明るい香りが強く出過ぎるのと、苦味のようなものも感じてしまう。なのでまずは焼酎の比率を抑えて、薄めのお湯割りをつくります」と説明しながら、小松山さんはスムーズな手つきでお湯割りをつくっていきます。
温めたカップに75℃くらいのお湯を注ぎ、焼酎を注ぎ入れる。焼酎とお湯の割合は3:7くらいです。薄めのお湯割りができたら、別のカップに液体を移しながら、何度かスワリングして空気を含ませる。こうすることで、少しだけ香りを飛ばしてマイルドにするんだそう。最後に少しだけ焼酎を追加して「飛ばした香りを回収するイメージ」で仕上げたら完成。
出来上がったお湯割りは、パイナップルのような香りだけがピックアップされていて、他の余計なものがすっかり削ぎ落とされたかのようなピュアさ。「加那はやっぱりソーダ割りが合うんですが、お湯割りでこの香りを綺麗に立たせるにはどうしたらいいか、同業者の方々や、酒屋さんともたくさん話しながら組み立てました」。
続いては麦焼酎のお湯割り。その名の通り、ブラウンシュガーのような甘味とコクがある、天盃の「クラフトマン多田 キャンティブラウン」をお湯割りにします。
「こちらは普通のお湯割りより15℃くらい低い温度でつくります。なぜかというと、とろりとしたテクスチャーを出したいから」。
ということでちょっと低めの60℃のお湯をカップに注ぎ、ビーカーでゆっくりと焼酎を注ぎ入れたら完成。「お湯の温度が低いと焼酎の香気成分が溶け切らないのでは?と思われるかもしれませんが、僕としては全部反応させる必要はないと思っているんです。溶け切らなかった焼酎がちょっと残っているからこその、この味の濃さみたいなものがあると思っていて。なんとなく感じていただけたら(笑)」。

小松山さんのおっしゃるとおり、飲んでみると舌を包み込むようなとろりとしたテクスチャー。この質感が、蜜のようなこっくりとした甘い香りに合います。なんだかデザートタイムに飲みたいようなお湯割りです。
「香りとテクスチャーのトーンを合わせることは、すごく大事にしています。甘い香りなのに、舌触りが刺激的だったりすると違和感を感じますよね。だからこの温度帯がベストだと思うんですよね」
3回に渡ってお送りしてきた「焼酎ふぇすてぃばる」レポート、いかがでしたでしょうか。今回なによりも感じたことは、焼酎業界のプレイヤーが続々登場してきているということ。
焼酎そのもののアップデートがすごいのはもちろんのこと、それに応えるかのように「この銘柄を最高においしく飲んでほしい!」と独自のメソッドを磨き上げる、“割りマスター”たちがすごい。毎エピソードに新しいキャラクターが登場して、必殺技を繰り広げているみたいな状況で、まったく目が離せません。置いていかれないように必死に並走しながら、今後も焼酎を追いかけていきたいと思います!
國酒 松
【住所】宮崎県宮崎市橘通東3-4-9 2F
【TEL】0985‐23‐9392
【instagram】https://www.instagram.com/kokushu_matsu/
構成・文:井上麻子 撮影:阪本勇