
あなたの焼酎ライフに革命を! 洗練されたバーテンダーのセンスとテクニックで、本格焼酎を最高においしく飲ませてくれるレストランバー「The SG Tavern」。今回の【焼酎の教室】は全5回にわたり、焼酎を愛するバーテンダーの大渕修一さんが銘柄に合わせて考案した、ソーダ割り&水割りの手法を教わっていきます。第4回目は、芋焼酎「玉露 甕仙人(ぎょくろ かめせんにん) ブルーボトル」(中村酒造場/鹿児島)の水割り。実は水割りが真骨頂の大渕さん。シンプルゆえに奥深い、バーテンダーの水割りとは。

2022年よりSG Groupに加わり、ワインカクテルのペアリングを提供するレストラン「swrl.」をマネージャーとして牽引。国内外の新店舗立ち上げにも携わる。本格焼酎に魅せられ、カクテルや水割り、ソーダ割りなどの多彩な飲み方を模索。いま蔵元からもっとも信頼されるバーテンダーの1人。
焼酎水割りの研究に並々ならぬ情熱を注いでいるという大渕さんは、さまざまな焼酎イベントで“水割りのプロ”としてお呼びがかかることも多い。焼酎の奥深さにハマっていくなかで、「水割りが一番面白いのではないか」という考えに至ったそう。

「20年前の焼酎ブームの時はロックが主流。現在ふたたび来ている焼酎ブームでは、ソーダ割りという新しい飲み方が人気です。水割りがなかなかフォーカスされないのは、“前割り”という文化が先にあったからではないかと考えます。何日か前から焼酎と水を合わせておくことで、液体同士が馴染んで素晴らしい飲み心地になる。ただ前割りの難点は、つくるのに時間がかかることと、つくったら飲みきらないといけないこと。瞬発的に前割りのようにおいしい水割りをつくることができたら……と、水割りを追求するようになりました。その方法を今日はご紹介したいと思います」(大渕さん)
倶楽部メンバー全員、拍手喝采。前割りに匹敵する水割りの手法が確立できたら、家呑みでも手軽においしい焼酎×水のカクテルができる! 期待に胸が高鳴ります。
実演するのは、鹿児島の中村酒造場が仕込む「玉露 甕仙人 ブルーボトル」の水割り。「お酒の説明を焼酎のプロからしてもらいましょう」と突如指名されたのは、ゲストとして参加していた「鳥酎 神田大手町」店長の中瀬航汰さん。大渕さんとは日々焼酎を語り合う戦友です。

「宮崎の契約農家さんが完熟堆肥栽培という特殊な栽培方法でつくる、黄金千貫という白芋を100%利用した、年に一回だけしか仕込みをしない焼酎です。鹿児島県の酒蔵が宮崎のお芋を使うのは、すごく珍しいこと。甕仕込みならではのコクとまろやかさがある、リッチな味わいが特徴です」(中瀬さん)
再び拍手喝采。期待値がマックスになったところで、いよいよレクチャー開始です。
グラスに45mlの焼酎を注ぐ

グラスを回して攪拌しながら、30mlの熱湯をグラスの肌に伝わせながらゆっくりと注ぐ。

氷を1つ入れ、40回ステアして完成。

人肌くらいのお湯割りをつくり、氷で加水するという二段階割り。一段階目は焼酎にゆっくりと熱湯を注ぐことで、乳化させるようなイメージでやるとよいそう。
「お湯割りで熱湯はタブーというのは、全焼酎ファンが認識していますが、今回は、あえて熱湯を使用しています。熱いお湯のところに少しずつ焼酎を注ぐと、焼酎がモロにダメージを受けてしまいますが、今回は焼酎を満たしたところに少しずつお湯を注ぐ。グラスも回して撹拌しながら注いでいきます。一番最初のお湯が触れる瞬間こそダメージはありますが、次第に焼酎の温度は上がり、お湯との温度差は埋まっていきます。熱を加えることで油分が溶け出し、ゆっくりじっくりと香りが開いていくんです」(大渕さん)

ゆっくりと温めて、ゆっくりと冷やす。こうすることで、甕仙人ならではのフレーバーが一気に花開くのです。熱湯と氷、相反する2つを駆使するとは脱帽です。
手順は複雑ながら、まるで実験のように楽しむ倶楽部メンバーたち。スムースな飲み心地とふっくらと立ち上がる香りに「あーいい香り。おいしい! これ飲みすぎちゃいますね」とうっとりしていました。

次回はついに最終回。バーテンダー御用達のある“道具”を使って、まるでワインのように楽しめる水割りをつくります。銘柄は、2025年に登場した業界のエポックメイキングな芋焼酎「襲(かさね)」。最後までお楽しみください!
文:井上麻子 撮影:伊藤菜々子