
中華麺の概念を覆す“超加水極太麺”は、『冨士麵ず工房』がdancyu祭のために試作を重ねて誕生した新作です。“もちっ”や“プリプリッ”とは違う、今までに体感したことのない“もちゃっ”とした食感が特徴で、力強い小麦粉の風味がブワッ〜と広がります。中華料理店だけでなく、イタリアンや和食店にも愛用者の多い老舗製麺所の意欲作を、ぜひご堪能ください。



波夛(はた)悠也さんは、昭和22年創業の老舗製麺所『冨士麵ず工房』の三代目。dancyu祭用の新作“超高加水極太麺”を、ゆでる前にさらに手でもみ込む。麺をあえて不均質にすることで、最後まで飽きずに食べられるという。
「麺の可能性を、とことん追求したいんです」と目を輝かせながら語るのは、波夛(はた)悠也さん。客の要望に真摯に向き合い、中華麺をはじめ、生パスタやうどんなど、多種多様の生麺を製造、販売している『冨士麵ず工房』の社長だ。麺にフォーカスを当てた料理を目標に据え、既存のルールに捉われない新しい麺を生み出している。例えば、伸びるのをよしとされない麺を、「伸びるの上等!」とばかり、コシを長持ちさせるために余計なものは添加しない。ツルツル、シコシコ、プリプリ食感が好まれるなか、あえて前代未聞の“もちゃっ”とした食感の高加水麺に挑戦する。すべては小麦の持ち味を生かすためだ。まさに麺の反逆児。業界に一石を投じる麺の表現をし続けている。
その境地に至ったのは、イタリア料理店で食べた手打ちパスタだったという。「フレイヤという螺旋状のパスタでしたが、麺の厚みと太さが不均一で、ゆでムラができていました。そのまだらな食感も楽しいし、からむソースの加減で味が変わるところも興味深かったです」。
dancyu祭に登場する“超高加水の極太麺”もそうだ。太さ1.5〜2cm、厚さも不均質の生麺に手もみを施し、さらなる不均質をつくり出す。「このねじれてちぎれそうな、儚い部分が美味しいですよ」と、波夛さんが笑う。小麦は、もちもちとした食感が特徴の品種、その名も“もち姫”と、キメの細かく弾力のある麺がつくれる“きたほなみ”を使用。“ロング挽き”と呼ばれる、ミネラル分を多く含むフスマ部分まで挽く手法で、より小麦の風味と香りを生かしている。約1分間ゆでた麺は一度食べたら忘れない、餅を超えた新食感。伸びた麺とは非なる優しい弾力があり、言うなれば“柔らか旨い”のだ。食感もタレのからみ具合も不均質。だがその揺らぎが、唯一無二の味になっている。
今回、甘辛味噌味の“回鍋肉まぜ麺”とスパイスの香り豊かな“ヴィーガンまぜ麺”の2種を提供。どちらもメキシカン・フレンチの「No Code」がレシピの監修をし、“回鍋肉まぜ麺”は麺の下に具材とタレを忍ばせるという、食べる楽しさも付いている。スパイスが程よく効いてパンチもあり、酒が恋しくなる味わいだ。混ぜるたびにタレの味と香りもクルクルと変化し、最後まで食べ飽きない。しかも超高加水の麺は小麦粉の量が少なく、食べ応えがありつつも、胃袋は軽い!
新感覚の麺体験を、ぜひdancyu祭で。誰をも魅了する旨さだ。


文:石出和香子 撮影:伊藤菜々子