
鮨を中心に、天ぷら、薪焼フレンチ、鰻やラーメンなどさまざまなジャンルで存在感を放つ外食ブランド「銀座おのでら」が祭に初参戦。「鮨 銀座おのでら 総本店」の味をそのまま再現した“江戸前ばらちらし”と、薪火で燻すふっくらした“国産うな重”を販売します。
「銀座から世界へ」をモットーに、現在、3カ国全22店舗を展開している「銀座おのでら」グループ。ここ数年、豊洲の仲卸「やま幸」と協働で新春恒例のマグロ初競りで一番マグロを落札し続けている注目株ゆえ、ニュースを見て記憶に刻まれている鮨好きもいるだろう。その総本山が、東銀座に店を構える「鮨 銀座おのでら 総本店」。銀座の鮨屋ながら、格式の高さを感じさせない和やかなムードで、連日、鮨好きで埋め尽くされている。
陣頭指揮を執るのは、統括総料理長の坂上暁史さん。鮨を握り続けて30余年。軽やかな話術と巧みな技で、客をもてなす達人である。北海道生まれで「気持ちはいつもどさんこ」。そう話す坂上さんは、豊洲に加え、北海道からもボタン海老やマスノスケなどを仕入れ、丁寧に江戸前の仕込みを施す。カウンターに座って味わう握りもいいが、常連客に人気のお土産がこちら。今回、祭に登場する華やかなちらし鮨である。
締めてから3日間寝かせることで、酸と塩味のバランスを整えた小肌。鮮度のよい活き穴子を、甘めの煮ダレでふっくら炊いた煮穴子。芯まで絶妙に火を通したプリッと弾ける車海老。歯ごたえがきちんと残るよう仕上げた煮蛸。車海老のすり身を1時間半かけて焼き上げたふんわりエアリーな厚焼き玉子。昆布たっぷりの煮切り醤油に漬けたいくら。それらの鮨ダネで埋め尽くされたちらし鮨はとにかく豪華絢爛。
鮨ダネに隠れて見えない部分にも、丁寧な仕事が施されている。「最後の一口まで飽きないよう、食感のアクセントを大事にしています」。そう話す坂上さんは、混ぜ飯にも独自の趣向を凝らす。赤酢でつくった酢飯に、甘辛く炊いたかんぴょう、ガリ、白胡麻入りの食感豊かな混ぜ鮨に。さらにその上に、車海老だけでつくったおぼろをこれでもかとのせるものだからなんとも贅沢。食感、香り、甘味に酸味、さまざまな味が口の中で混ざり合い一体化して、最後にはすっきり爽やかな余韻が残る。会場で食べるか、持ち帰って自宅で楽しむか、悩ましいことこの上ない。
祭には、同グループの「薪焼うなぎ 銀座おのでら 本店」も参戦する。2024年7月、赤坂にオープンした鰻店だ。扱うのは国産鰻オンリー。店名のとおり、炭ではなく薪で焼く独自のスタイルで提供。と聞けば値段が気になるところだが、ランチはうな丼が980円からという良心価格。夜がまたいい。鰻のタレと山椒をまぶすフライドポテト、ペペロンチーノ風味の枝豆を薪火で焼く枝豆などのつまみが充実。ビールにハイボール、ワインもあるので、居酒屋感覚で楽しめるのである。
料理を監修するのは、「薪焼 銀座おのでら」料理長の寺田惠一さん。フレンチと和を融合させた独創的な薪焼き料理の名手である寺田さんならではの技。それが、鰻を薪火で焼き上げる手法だった。
「ヒントになったのは、修行時代にフランスで味わったスモークサーモンならぬスモーク鰻。鰻重の鰻も、薪火で燻すように焼いたら旨いだろうなと閃いたんです」と寺田さん。白焼きを、薪火で豪快に焼き上げ、赤ワイン入りの特製ダレをくぐらせた鰻。猛烈に食欲をそそる鰻を真っ白なご飯にのせた鰻重が、祭の会場で味わえる。
文:安井洋子 撮影:牧田健太郎