紀州、会津と並ぶ三大漆器の一つ、輪島塗りのコレクションが初めて祭に参戦!石川県輪島市で創業200年の歴史を誇る輪島塗の老舗「輪島キリモト」の器は、“用の美”を追求したシンプルなデザインが持ち味。高度な技術を要する伝統工芸品でありながら、日常の暮らしに寄り添う器であってほしいという造り手の願いが表現されています。会場ブースには、商品デザインも手掛ける代表の桐本泰一さんがスタンバイ。輪島塗についての知識を深めながら、この機会に一生ものの漆の器を手に入れてみては?
「輪島キリモト」の前身は、江戸時代後期から長く輪島漆器の製造販売を営み、昭和に入って“木地屋”を創業した「桐本木工所」。現代表の桐本泰一さんは七代目に当たる。
輪島塗は完全分業制による職人仕事で仕上げられるが、輪島キリモトは伝統的に木地職人と漆塗り職人を抱えてきた全国でも類を見ない漆器メーカーの一軒。
「木地製作と漆塗り、それぞれ専門性の高い技術をトータルに掛け合わせ、新しいモノ作りに生かせるのが当社の強みかもしれません」
木地の下地に“輪島地の粉”(輪島市内の小峰山から産出される珪藻土を焼成して粉にしたもの)を用いる本堅地技法を基本に、輪島地の粉を表面近くに重ね塗りして強度を高める「蒔絵技法」、特殊な塗り込みで表面に筋模様をつくる「千すじ技法」、麻布に漆を塗り重ねる「布みせ技法」など、独自の仕上げを施した漆器も多く手掛けている。
その造形デザインの美しさは、大学でプロダクトデザインを専攻した希代のアイデアマン、桐本さんの発想力によるところも大きい。
元旦に発生した能登半島地震は、輪島市内約400ヶ所の輪島塗工房や漆器店のほとんどに甚大な被害を及ぼした。「輪島キリモト」も例外ではなく、桐本さんとご家族、職人やスタッフを含む社員が全員被災。輪島市内工房やスタジオは倒壊を免れたものの、機械設備などのインフラで大きな損害が生じ、残念ながら商品の製造再開には至っていない。
今回会場に届けられるのは、震災の衝撃を受けながらも揃って無傷で残った強者たち。陶器とは違う漆器のしなやかな強さを、改めて実感させられる。
「時間はかかりますが、必ず輪島は復活します。復興のモデルケースとなるよう、輪島塗を長く続ける取り組みを進めていきたい」と桐本さん。
ここで、こっそり打ち明ければ、輪島塗の魅力を最高にわかりやすく、かつユーモアたっぷりに語らせたら、桐本さんの右に出る者なし。「輪島キリモト」のブースで出会えたらラッキーだ。
知りたいことは、どしどし聞いてしまおう。きっと輪島塗に魅せられ、お持ち帰りの誘惑から逃れられなくなってしまうにちがいない(それも、またよき)。
※当日は内容が変更になる場合もあります。
文:堀越典子 撮影:赤澤昂宥