自宅から離れた病院に入院・通院している子どものご家族が、病気と向き合う子どもに付き添うことができる時間を増やすための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」にて、家族のために食事を提供するミールプログラムを実施しました。7月31日の第1回の様子をレポートします。
「ドナルド・マクドナルド・ハウス」は、病気と向き合う子どもと、その治療に付き添う家族が利用できる滞在施設です。“マックのおうち”とも呼ばれ、コンセプトは“第二のわが家”。1974年に米フィラデルフィアで誕生し、49の国と地域に386ヶ所、日本には12ヶ所あります(2023年8月時点)。高度小児医療を行う病院に隣接して設置され、施設の運営はすべてが、マクドナルドの店頭募金や、企業・個人からの寄付・募金で成り立っています。
今回訪れたのは、「ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや」、通称「せたがやハウス」。国内最大の小児・産科医療を専門とする「国立成育医療研究センター」の隣にあり、ここでしか受けられない移植などの高度な治療のために、国内だけでなく、場合によっては海外から子どもが入院します。そのハウスの利用期間は、病状によって異なりますが1年、3年、中には、13年にわたって繰り返し利用されている方もいます。
入院している子どもは、病院の許可が出れば、病院とハウスを行き来できるだけでなく、ハウスを利用している家族と一緒の部屋に外泊することもできます。その際、病気の子ども本人は無料。家族の滞在費は、1人1日1000円で、設立当初から変わっていません。掃除、洗濯、ベッドメイクなどの運営は、すべて「せたがやハウス」に所属している190名近いボランティアの方々によるもの。各部屋は、細部まできれいで明るく、ボランティアさんの手で縫われたキルトカバーがベッドに掛けられています。
dancyu食いしん坊倶楽部として、「せたがやハウス」でミールプログラムを実施しました。ミールプログラムとは、ハウスを利用する家族の忙しさをサポートし、少しでも元気になってもらうために、食事を提供するボランティア活動のことです。第一回は、「食で日本を元気に」という食いしん坊倶楽部の思いを理解していただけるお店として、清澄白河の中国料理とワインの店「O2(オーツー)」の大津光太郎シェフに依頼しました。
「マクドナルドの店頭で募金箱を見たことがありましたが、詳しくはどういう施設なのか知らなかったんです。でも、今回、お声がけいただいてから調べたら、是非協力したいと思いました。僕にできることなら、何だってやりたいです」と大津シェフ(写真右から2番目)。「O2」チームからは、細野栄盛さん(写真右)、ソムリエの大竹智也さん(写真左から二番目)、新山綾香さん(写真左)に参加していただきました。
ミールプログラムでつくったのは、ここでしか食べられないスペシャル弁当。「焼売」や「カヌレ」といった店の定番メニューのみならず、「太刀魚のフライ 酸菜タルタルソース」、そして、店では出していない「魯肉飯(ルーローハン)」を特別につくっていただきました。そして、編集長の植野は、北海道檜山郡のアスパラ専門農家、ジェットファームのアスパラを使った「アスパラの煮浸し」と、築地場外にある豆腐店「杉寅」の豆腐を使った「寄せ豆腐ともずくの汁」を。広々としたオープンキッチンで連携をとりながら、オーダー順に1つ1つ出来たてを提供していきました。
隣の病院に入院する子どもとの面会を終えられたハウス利用者の方々が、続々とダイニングスペースへ。食事された方々の声をここで紹介させていただきます。
「明日から娘が長期入院するということもあり、正直あまり食欲がなかったのですが、本当においしかったです。噛むほどにスパイスを感じる焼売は新感覚でした」。
「自分のことは二の次になってしまい、いつも子供の面会が終わったら、適当に食べて寝ることが多いのですが、出来たてで、温かいものを食べられるのが幸せでした。豆腐のスープのお出汁が優しくて沁みました」。
「太刀魚のフライがふわふわで、酸菜タルタルソースが瑞々しくて爽やか。まさかここで『O2』の料理を食べられるなんて……。いつか行きたいと思っていた店なので、感動しました」。
「初めて魯肉飯を食べたんですが、豚肉は噛むほどに旨味が出て、ご飯にかけたら格別でした。今週末に息子が退院するんです。いつか清澄白河のお店に息子と食べに行きたいです」
dancyu食いしん坊倶楽部では、今後も継続的に、ミールプログラム活動を行っていきます。定期的な活動を続けていくにあたって、皆さまからの寄付を募りたいと考えております。皆さまからのご寄付は、主にミールプログラム食材の購入費として使用させていただきます。詳細については、次回以降の記事でご案内予定ですので、サポートしていただける方、是非、ご協力をお願いいたします。
撮影:赤澤昂宥 文:編集部