dancyu食いしん坊俱楽部
缶詰プロジェクト第1弾試食会を開催しました!

缶詰プロジェクト第1弾試食会を開催しました!

皆さんの意見を商品開発に生かします!

今年春より始動したdancyuの「缶詰プロジェクト」。食いしん坊たちの心をくすぐるおいしい缶詰を生み出すべく、旅先で楽しめる“駅弁缶詰”(略して駅缶)を構想中だ。その第1弾として、まずは、「常温で食べられるご飯缶詰」の開発に着手。11月下旬、その試食会がプレジデント社会議室にて行われた。

ストイックな試食会。でも盛り上がるのが食いしん坊!

今回、本誌とタッグを組んで開発に当たるのは、高知県は黒潮町に工場を構える「黒潮町缶詰製作所」。東日本大震災の際、今後、日本最大の津波(34m)が来る可能性があると判明した同町。しかし、それを教訓に、防災にも役立つ缶詰づくりを町の産業にしようと、2014年に発足した第3セクターの缶詰会社だ。カツオの一本釣りで知られる明神丸などが在籍する黒潮町は、山海の幸に恵まれた場所。そうした土地の恵みを活かしながら、7大アレルゲン(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)を使わず、誰もが安心しておいしく味わえる缶詰づくりを行なっている。
当日は、開発スタッフの友永公生(きみお)さんと森元秀典さんが駆けつけ、力作のスライドを交えながら、試作品完成に至るまでのレクチャーが行われた。

熱き開発スタッフの友永さん(右)と森元さん(左)。当日は、自然豊かな黒潮町の魅力もたっぷり教えてくれた。

会場に集まったのは、ご飯好きや缶詰好きをはじめとした21名。なかには、「趣味の登山での食事の参考に」「防災用でもおいしい缶詰を備蓄したくて」といった“缶詰の可能性”に期待して参加した人や、「食いしん坊倶楽部のイベントならきっと面白いはず」と、当倶楽部への期待の高さを伺わせる声も多かった。

熱心に耳を傾ける参加者たち。会場には勉強会のような真剣さが漂う。

ところでこのご飯缶詰。実は、常温でそのまま食べられるものはまだ市販されていないことをご存知だろうか? すでに販売されている商品の多くが、温めてから食べる「再加熱」を前提にしていたり、あるいは、ご飯が固まらないようにあえて水分を多めにしたものばかり。実は、「常温でおいしいご飯缶詰」の開発自体が、缶詰界のパンドラの箱を開けるくらい、非常に難しいものだったのだ!

試作品の試食を前に、現在市販されているご飯缶詰を食べてもらった。ボロボロとした食感のもの(再加熱タイプ)や、ひどく食感のゆるいもの(水分や油分を多量に加えたタイプ)などばかりで、「常温でおいしいご飯缶詰」をつくる難しさを実感してもらえたようだ。

その原因が、ご飯に含まれるでんぷんが持つ性質――――「α化」と「β化」――――だ。友永さんらの説明によれば、「α化」とは、でんぷんに熱湯が加えられることによってドロドロとした糊状になることで、要はご飯が柔らかくなることだ。ご飯の炊飯はこの性質を利用している。一方の「β化」は「老化」のことで、時間が経つと炊いたご飯が硬くなってしまうことを指す。

精米方法や、米に水を吸水させる浸水時間を変えることで、ご飯の食感をよくする涙ぐましい努力が続けられた。

つまり、「常温でおいしいご飯缶詰」を作るには、缶詰に詰めた状態でおいしい食感になるように米を炊き(α化)、缶詰に詰めた後は「β化」をできる限り防いで米の柔らかさをキープするのが不可欠なのだ。前者の方は、試行錯誤の末に、ほどよい炊飯時間を突き止め、さらに食感を良くするために白米に玄米を混ぜるということで解決が見えた。
しかし、問題は後者。いくらご飯がおいしく炊けても、温度環境によってβ化が進んでしまえばどうしようもない。
そこで友永さんたちが考えたのが、水分が飛ばないようにご飯を油でコーティングする、という作戦だ。

(左)油を添加した玄米と、(右)油なしの玄米。どのご飯缶詰も、1缶の量はおよそご飯1膳分。

食材の風味を損ねない綿実油を使ったり、あるいは食材自体に油分のある梅や鮭をご飯と合わせることで、β化の進捗を遅らせる方法がとられた。
開発の難易度の高さに、「他社がやっていない理由がわかりました(苦笑)」(友永さん)とのことだが、そのねばり強い情熱的な姿勢と、苦労の連続だった開発過程の報告に、会場中が真剣に耳を傾けていたのが印象的だった。

というわけで、いよいよ試食タイムへ。当日用意された試作品は、次の通り。白米のみの缶詰とそれを再加熱したもの、玄米主体のご飯とそれに油を添加したもの、玄米主体のご飯に梅を載せた日の丸ご飯、同じく玄米主体のご飯に鮭の切り身を載せた鮭ご飯の、計4品6種だ。

白米のみの試作品がこちら。現状の市販品と比較すると格段においしさがアップ!しかし、さらなる食感の良さを追究するスタッフは、白米に玄米を混ぜる作戦に。妥協のない姿勢に頭が下がる。
「缶詰はビジュアルも楽しくなくては」と友永さん。こちらは、ご飯の中に梅が沈んでしまわないように、大粒の梅を使用。当日蓋をあけるまできちんと日の丸ご飯になっているのか不安だったそうだが、見事大成功!
トリを飾ったのは、鮭の切り身がどーんと鎮座した鮭ご飯。予想以上のボリュームで、「これは嬉しい!」「鮭の自然な脂がご飯になじんで美味」との感想が飛び交い、今回の一番人気だった。

白米、玄米、日の丸ご飯、鮭ご飯へと進むにつれ、参加者からは「おいしい」の声が上がり始め、最後の鮭ご飯では、缶のふたを開けるなりこの日最大の歓声が上がった。特に、日の丸ご飯と鮭ご飯では、その食感や味わい、見た目のビジュアルも含めて賞賛が相次いだ。
「レクチャーを聞いて、常温で食べるご飯の開発は難しいんだなと思ったけど、ここまでおいしいものができたのがすごい」「日の丸ご飯も鮭ご飯も、もう立派なお弁当として売れると思う」などの反響に、開発スタッフの二人もホッとした表情を見せていた。

4~5人ずつ、5組に分かれて試食。「なんだか実験大会みたいで楽しい」との声も。
1缶1膳分なので、一口ずつ食べたとしてもかなりお腹にたまるのだが、予想以上のおいしさに完食する参加者も。
各テーブルを回り、参加者たちから生の意見をもらう。開発スタッフにとっては大きなヒントになったようだ。

会の終盤には、今回の試作品をさらにより良いものにするためのアイデアや意見を交えた質疑応答が行われた。
「でんぷんの少ないタイ米やインド米の缶詰を作って、カレー弁当を作ってほしい」「油でコーティングするなら、いっそ炒飯やピラフにしてはどうか」「高知のご当地食材であるカツオや、産地にこだわったブランド米を使うとPR効果があると思う」など、“さすが食いしん坊倶楽部”と唸らされる提案が相次ぎ、開発スタッフや事務局スタッフも、その熱い声に顔をほころばせた。

質疑応答では、鋭いビジネス的な視点からの意見も多く、最後まで熱い意見が飛び交った。

こうして、当倶楽部始まって以来の、“酒なし・つまみなし・ご飯のみ”というストイックな試食会は終了。今後は、さらなる改良と、おかず缶詰の開発に着手する予定だ。会員の皆さんの声も反映したdancyuの「缶詰プロジェクト」、引き続きご注目を!

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文:白井いち恵 写真:富貴塚悠太