市場の豊洲移転もなんのその、築地の場外市場商店街は今もパワフルに営業中だ。本誌も追いかけ続けてきたこの食の街で、今回は、腕によりをかけた“大人のバーベキュー”を決行!目利きの食材に舌鼓を打ちながら、変わらぬ築地の魅力と、食欲の秋を満喫した。
夏の暑さも和らぎ、心地よい風が吹く9月下旬の土曜の昼下がり。9組33名の食いしん坊が、築地の新・ランドマークである商業施設「築地魚河岸」の屋上に集結した。実はこちら、好きな食材さえ持ち込めば、器材のレンタルや炭火の準備まで専任スタッフがやってくれる、知る人ぞ知るバーベキュー広場(毎週土曜のみ営業・事前予約制)でもあるのだ。休日の昼酒にはうってつけの空間だ。
本日の主役は、築地の新鮮食材の数々。目利きの人気鮮魚店2軒に協力を仰ぎ、舌の肥えた“部員”たちを満足させるべく、特別に集めたものばかりだ。貝専門の老舗卸が営む「築地わたなべ」からは、岩手・野田村の殻付きホタテを筆頭に、北海道・釧路産の真牡蠣、千葉・九十九里産の地ハマグリが到来。対して、和食の料理人経験を持つ門井直也さん率いる「築地 京富」からは、丁寧にワタを取り、塩を振ってくれた石川産のノドグロや、今年は特に貴重な北海道・根室産のサンマなどが届く。他にも、特大サイズの松茸やジューシーな博多地鶏、〆には編集長がこよなく愛する「丸豊」の特製おにぎりが用意されるなど、宴の準備は万端だ。
ここで、スペシャルゲストが登場。焼き鳥の名店「バードランド」(銀座)の店主、和田利弘さん――――言わずと知れた炭火焼き界のレジェンド――――だ。贅沢にも、バーベキューの指南役として加勢した和田さんは、「火力が安定していて、備長炭と比べると初心者にも扱いやすい」と太鼓判を押す「岩手木炭」を使い、そのゴッドハンドを参加者の目の前で惜しげも無く披露。さらに、「炭は、油分を含んだ木の皮目の部分を内側にして着火剤の方に向け、それをピラミッド状に積むと火がつきやすい」「鶏肉は、包丁を入れて肉の厚みを均等にしてから、身の方から焼くと美味しく焼ける」等々、金言&名言が次々と飛び出す。
実演後も、各テーブルを回って個別に焼き方のアドバイスを送り、時には自ら“網奉行”を買って出る一幕も。「和田さんに貝を焼いてもらっちゃいました!」と感激する女性陣や、「目の前で見た鶏肉の下処理が鮮やか過ぎて、料理を始めてみたくなりました」と目を輝かせる男性など、その気さくな人柄に魅せられた人も多かった。
また、会が進むにつれ、今度は編集長のサービス精神にも火がつき、焼きホタテにトッピングするための発酵バターが急遽振舞われたり、オリジナルエプロンやカタログギフトなどの豪華賞品をかけた全員参加の“じゃんけん大会”が行われるなど、嬉しいハプニングも続出。大空の下、大人たちが本気で食べ、飲み、笑い、魚介のおいしさや炭火の力を体験する一日となった。
終了後も、「ぜひまた開催してほしい」という声が相次いだこのバーベキューイベント。dancyuと会員の双方で盛り上げ、美味しい時間をともに作り上げていくことを目指す「食いしん坊倶楽部」に、新たな定番が加わりそうだ。
(和田さんに密着した炭火焼き特集が掲載されているdancyu8月号もぜひご覧ください)
文:白井いち恵 写真:富貴塚悠太