ジビエの晩餐会「あなぐまを食べる会 リターンズ in 福井」の翌日となる2018年12月5日。福井観光コンベンションビューローとdancyuのwebとが催す初の試み、“福井の食文化探訪ツアー”が開催されました!冬の福井には、どんなウマいものが待っていたのか。
2018年12月5日7時30分。福井観光コンベンションビューローとdancyuのwebとの特別ツアーの参加者30人が、福井駅前に集合した。
福井の冬の味覚といえば、なにを置いても思い浮かぶのは“越前がに”だろう。越前がにとは、福井県の4つの漁港(越前漁港、三国港、敦賀港、小浜港)で水揚げされたオスのズワイガニのことで、毎年11月6日に漁が解禁となる。
これは、ぜひとも水揚げされるところを、そして白熱する競りを見たい。一行は大型バスに乗り込み、県随一の水揚げを誇る本場の越前漁港を目指した。
......のだが、この日は、なんと時化のため漁がないという。つまり、水揚げはなし。
がーーーん。自然が相手ゆえに思い通りにはならないとわかってはいるものの、海風が吹き抜けるがらんとした漁港できゅっと下唇を噛みしめる。無念。
越前がにには会えなかったが、越前町漁業協同組合専務の小倉孝義さんが漁の様子や水揚げの風景をビデオで観せてくれたり、港をまわりながら丁寧に解説をしてくれた。
越前がには全国で唯一の皇室に献上される蟹であり、越前のズワイガニ漁は国内最古といわれるほどの歴史をもつという。福井県のズワイガニの水揚げ高の約80%が越前町で揚がり、その筆頭となるこの越前漁港には、2018年12月の時点では43隻の船が在席していた。
11月6日、漁の解禁日。夜10時に船が一列に整列し、「よーいドン」でそれぞれの漁場をめざして出航する。熾烈な漁は翌年の3月下旬まで続く(ちなみにメスのセイコガニ漁は漁の解禁から約2ヶ月の年末でおしまいとなる)。
ブランド蟹の証としてよく見かける、タグ。実は1997年、全国で初めて蟹にタグの取り付けを行ったのは、ここ越前町漁業協同組合である。2018年には、これも全国で初めて蟹でGIマークを取得。福井では、獲れた蟹は30種ほどのランクに分別され、タグ付きの蟹は8段階に振り分けられる。中でも、2015年には「極(きわみ)」という最高峰の段階が登場。その選定サイズは、甲羅幅14.5cm以上、重さ1.3kg以上、爪の幅3cm以上と極大。お味もお値段も、まさに冬の味覚の王者なのだ。
続いて一行は、「越前がにミュージアム」へと向かった。漁港に蟹はいなかったけれど、ここには蟹がいるそうだ。そもそも、蟹だけのミュージアムって?入口には、ハサミを振り上げて手招きするような蟹のオブジェが並んでいる。隣接するショップには、海の幸がずらりと並んでいる。心なしか、みんなの興味は買い物へと移ろっているような気もするが、まずは、ミュージアムへと入ってみようじゃないか。
次に向かったのは、「越廼ふるさと資料館」。福井県北部、越前岬の北側に位置する漁村の暮らしを伝えている。
左手に日本海、右手の山側には群生して咲き誇る水仙を見ながら、目的地に到着!
ここもまた、ミュージアム同様に精巧な模型が当時の暮らしを伝えてくれて、ぐいぐい惹き込まれる。食欲ばかりじゃない、知識欲もきちんと満たしてくれるのが、ありがたい。
港に行った。蟹も見た。食文化を知る文化施設も訪ねた。お腹がすいてきたところで、いよいよ昼食だ。バスの中では、「皆さまには、まつ田せいこ丼を召し上がっていただきます」のアナウンス。って、どんな丼なんだ?
――つづく。
文:沼由美子 写真:出地瑠以