料理研究家の有賀薫さんの偏愛食材一品目はごぼう。意外に思うかもしれませんが、ごぼうの土っぽい香りと真っ白なルウがよく合います。料理研究家の有賀薫さんに大好きな食材とそれを使ったレシピを教えてもらいました。
「いつも同じスープになりませんか」
毎日スープをつくっていた頃、多くの方に聞かれました。朝に弱い息子を起こすために始まったスープづくり。10年ほど続けましたが、ひとつとして同じレシピはありません。なぜ、それが可能だったかといえば、〈食材に力がある〉からです。
たとえば、野菜。旬の野菜は旨味を多く含んでいます。また、切り方を変えるだけで、スープの味ががらりと変わります。今の時季なら、ごぼうや大根は特に優秀。レシピがいくらでも広がります。たとえ大根のスープが数日続いても、毎日新鮮な気持ちで味わえます。
身近なベーコンは、具としても旨味出しとしても使えます。骨付き肉は、骨から濃いだしが出ます。市販のコンソメやだしの素のお世話にならなくても、わざわざ一からだしを引かなくても、食材と向き合い、食材の力を生かすことで、手間をかけずに毎日新しいスープができるのです。
まずは野菜の切り方を変えてみる。そこから始めてみてはいかがでしょうか。
ささがきやたたきごぼうなど、切り方を変えるだけでさまざまなおいしさが発見できる野菜です。お薦めはコロコロ切り。味、香り、歯ごたえなど、ごぼうの魅力満載のスープがつくれます。ちなみにごぼうの香りとは、土のにおいのこと。この香りこそごぼうのおいしさなので、皮はむかず、たわしでこすり洗いする程度にとどめて調理します。
ごぼう | 1/2本 |
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鶏もも肉 | 1枚(300g) |
バター | 20g |
小麦粉 | 大さじ2 |
牛乳 | 100ml |
塩 | 小さじ2/3 |
粗挽き黒胡椒 | 少々 |
ごぼうはたわしで洗い、麺棒で軽くたたいてから幅2~3cmに切る。鶏肉は3cm角に切る。
鍋にバターを入れて中火にかけ、溶けたら小麦粉をふり入れてゴムベラで2分ほど炒める。ルウができたら、水400mlを少しずつ加えながらよく混ぜる。
②に①を加え、煮立ったら弱火にし、焦げつかないようにときどき返しながら煮る。
ごぼうが柔らかくなったら牛乳、塩を加えて温める。器に盛り、胡椒をふる。
2011年より毎日SNSでスープのある生活を発信。スープから始まるライフスタイルを提案している。実験イベント“スープ・ラボ”はじめ、スープをテーマにしたイベントを多数主催。著書に『スープ・レッスン』(プレジデント社)、『有賀薫の豚汁レボリューション』(家の光協会)、『私のおいしい味噌汁』(新星出版社)など多数あり。
この記事は『四季dancyu 2023 冬』に掲載したものです。
文:佐々木香織 写真:安彦幸枝