料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。もし“ポテトサラダ”をつくり過ぎてしまったら?朝ごはんにぴったりのレシピを紹介します!
もし、冷蔵庫に“ポテトサラダ”がちょっとだけ残っていたら?前回は熊本のソウルフード“ちくわサラダ”を教わったが、やはり“フードロサない”ための王道の食べ方として思いつくのは、サンドイッチだろう。食パンはもちろん、コッペパンやバゲットに挟むのはみんな大好きな味だ。そんな話を尾身さんにしたところ、想像の斜め上をいく、そそられる提案が返ってきた!
「普通のサンドイッチはみんなつくってるから、つまらないでしょ?“クロックムッシュ”にするのはどうかしら?」
なんと、ポテサラがあのクロックムッシュに……!ハムとチーズを挟んだパンにベシャメルソースを塗って焼く、フランスではおなじみのホットサンドだ。その歴史は古く、20世紀初頭にパリのオペラ座近くのカフェでつくられるようになったといわれている。
「クロックムッシュを家でつくってみたくても、ベシャメルソースのハードルが高いんですよね。そこで活躍するのが、残ったポテサラ!生クリームでのばして、ベシャメルのかわりに使います。この“ポテサラソース”がいい仕事をしてくれるんです」
そう話しながら、パンを取り出した尾身さん。ポテサラは本当にクロックムッシュになれるのだろうか……?
「焼けましたよ~!」と、あっという間に出来上がったクロックムッシュ。こんがり焼けたポテサラソースが見るからにおいしそう……!いざ食してみると、カリッと焼けたパン、存在感のあるハム、とろとろのチーズ、そして濃厚ポテサラソースのハーモニーが絶妙。ポテサラのきゅうりもピクルスのようで、カリッといい食感のアクセントなのだ。しかも生クリームのおかげで、ちゃんとベシャメル並みにリッチなソースになっている。
おいしくつくるコツは、ポテサラソースづくり。尾身さんは、「生クリームの量がポイント!」と教えてくれた。
「ポテサラに生クリームを混ぜると、最初はなめらかなのに、少し時間が経つと、なじんでかたくなってきます。そこで、生クリームを追加したくなるのをグッとこらえて!このポテサラソースは、焼いて熱が加わると、生クリームがゆるんで、たれやすくなります。ここだけはレシピの分量をしっかり守ってつくってみてくださいね」
また、食パンとチーズ選びにこだわれば、さらにおいしさもアップする。尾身さんのおすすめは、イギリスパン。ざっくりした食感で、クロックムッシュに合うという。チーズは普通のスライスチーズでもいいが、グリエールやエメンタールなどコクのあるものがあれば、より本格的な味に。朝食はもちろん、休日の昼下がりにワインと一緒に楽しむのもよさそうだ。
食パン | 2枚 |
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スライスチーズ | 1枚 |
ハム | 1枚 |
バター | 適量 |
★ ポテサラソース | |
・ 残ったポテトサラダ | 90g |
・ 生クリーム | 大さじ3 |
・ 塩 | ひとつまみ |
・ 黒胡椒 | 少々 |
食パンの片面にバターを塗る。バターを塗った面が外側になるようにして、スライスチーズとハムを挟む。
ボウルにポテトサラダを入れ、大きめのじゃがいもや具材があれば、スプーンでつぶしておく。生クリームを加えてなめらかにのばし、塩、黒胡椒で味を調える。
フライパンを弱めの中火にかけて、具材を挟んだ食パンを焼く。フライ返しで軽く鍋肌に押し付けるようにしながら、両面にこんがり焼き色がつくまで焼く。
ステンレス製のバットに焼いた食パンを置き、上にポテサラソースをのせる。ソースがたれるのを防ぐために、バットごとオーブントースターに入れ、8~10分焼く。こんがり焼き色がついたら出来上がり。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之