可憐な花蕾が、溝に入り込んでフジッリのおいしさをアップ!甘くてホクホク……。ブロッコリーの茎の魅力に開眼する一皿です。食べると元気になる野菜パスタを食文化研究家である北村光世さんに教えてもらいました。
イタリアをはじめ、地中海沿岸はオリーブオイル圏。その使い方には、学ぶべきところがたくさんありますよ」と語るのは、オリーブオイル使いの達人・北村光世先生。野菜がおいしく味わえるパスタを、とお願いしたところ、つくってくださった8品は香味野菜を除けば、それぞれで使う野菜は1種類のみ。炒め煮、蒸し煮、非加熱、と調理法はさまざまだが、オリーブオイルをたっぷりと使うのが特徴だ。
「オリーブオイルは単なる油ではありません。食材の風味を引き出す調味料であり、だしであり、ハーブ的な役割も果たす。しかも、抗酸化物質を豊富に含むなど栄養価も高いうえに、加熱にも強いんです」。なるほど、いずれも単品野菜の持ち味がくっきり鮮やかに引き出され、野菜パスタにありがちな物足りなさは皆無。むしろ、おなじみの野菜がこんなにおいしいものだったのか、と驚くほどだ。
そして、特筆すべきはもう一点。パスタがしみじみとおいしいのだ。ちなみに、今回はすべて乾燥パスタを使用。北村先生によると、「オリーブオイルをメインの油脂として多用するイタリア南部は、硬質小麦を使った乾燥パスタの故郷です。オリーブオイルと乾燥パスタの組み合わせは相性もいいですね」とのこと。北村先生は、野菜の切り方や調理によって、数種類の乾燥パスタを使い分け。いずれもオリーブオイルが仲立ちし、パスタと野菜が一体となって口に入る。一緒に咀嚼(そしゃく)すると、パスタにからんだ野菜の甘味やほろ苦味などが弾けるとともに、パスタの小麦の味がじわじわと感じられ、食べすすむほどに楽しく、元気になってくるようだ。
「イタリアでは食材そのものの味を楽しむのが基本。オリーブオイルを使うとほかの調味料をあまり使わなくても済むので、食材の味がしっかりと堪能できるんです」。野菜のパワーをもらいながら楽しんでたっぷりと食べ、食後はすっきり満ち足りた気分。オリーブオイル+単品野菜+乾燥パスタで、パスタの新境地が開けます!
「ブロッコリーは茎こそが甘くておいしいの。花はあまり味がないのだけれど、フジッリにからむとソースのようになって面白いのよね」と北村先生。茎と花蕾の食感や風味の違いが生み出すブロッコリーの意外なおいしさに驚く一品。
ブロッコリー | 1/2個(150g) |
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にんにく | 小1片分(5mm角に切る) |
A | |
・ 水 | 50ml |
・ コラトゥーラ | 小さじ2(*) |
エクストラバージンオリーブオイル | 大さじ3 |
赤唐辛子 | 1本(種を除く) |
胡椒 | 適量 |
★ パスタ | |
・ フジッリ | 130g |
・ 水 | 1.5L |
・ 塩 | 大さじ1弱 |
パルミジャーノチーズ | 大さじ2(すりおろし) |
*イワシを原料につくられるイタリアの魚醬。古代ローマにルーツをもつとされている。ない場合はナムプラーで代用できるが、塩気が異なるので加減して使用。
ブロッコリーは、洗って水気をきる。表面の花蕾部分を包丁で厚さ約3mmに削って切り離す。出てきた細い茎の部分を長さ約3mmに切り離す。それを何回か続け、茎が直径約1cmの部分になったら、切り離して1cm角に切る。太い茎は包丁がすっと通るところでかたい部分を切り落とし、かたい部分は皮を厚めにむき、1cm角に切る。
フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱めの中火にかけ、フライパンを傾けてにんにくをオイルの中で泳がせながら加熱する。にんにくのまわりにプクプクと大きめの泡が出てきたら唐辛子を加え、木ベラで混ぜて加熱する。
にんにくが色づく手前で①のブロッコリーの角切りの部分を加え、オイルを全体にからませる。1~2分後、花蕾と細い茎の部分を加えてよく混ぜる。フジッリ用に鍋に水を入れて中火にかけ、沸騰したら塩を加えて再沸騰させる。フジッリを入れてよく混ぜ、ゆで始める。
Aを混ぜ合わせて加え、ざっと混ぜる。弱火にして蓋をし、角切りの部分がやわらかくなるまで蒸し煮にする。やわらかくなったら蓋をはずしておく。
フジッリの袋の表示のゆで上がり時間の2~3分前になったら、ゆで汁50mlをとって④のソースに加え、中火で加熱する。水分が足りなければゆで汁を足す。
フジッリは表示のゆで上がり時間の1分前になったら、手早くかたさをチェックする。アルデンテの状態になっていたら、ザルにあけ、水気をきって④に加え、木ベラでよく混ぜる。パルミジャーノチーズを全体にふり、手早く混ぜる。
京都生まれ。アメリカ留学後、青山学院大学で長年教鞭をとる。30年以上にわたって地中海地域をはじめとする世界各国を旅し、あるいは生活しながら、風土ありきの食文化や料理を研究。また、イタリア・パルマの郊外に拠点をもち、イタリアと日本の文化交流にも力を注ぎ続けている。
※この記事の内容はプレジデントムック技あり!dancyu「パスタ」に掲載したものです。
文:遠藤綾子 写真:牧田健太郎