荻野恭子さんの手づくり調味料レシピ
荻野恭子先生の自家製"塩レモン"

荻野恭子先生の自家製"塩レモン"

一世を風靡した塩レモン。荻野先生も愛用している万能調味料です。材料は果汁たっぷりの完熟レモンと塩だけ。フレッシュ感に熟成した旨味と塩気が加わることで、サラダや煮込みなどに使い勝手抜群な調味料に仕上がります。料理研究家の荻野恭子さんから、日々役立つ調味料を習いました。

一度は試してほしい万能選手

荻野恭子さん
料理研究家・荻野恭子さん。

芽吹きの春がやってきました。夏から始まった、手づくり調味料レッスンもここで一巡り。私が日々の暮らしのなかで実践しているものをご紹介してきましたが、最後は完熟レモンを使った塩レモンと味噌のレシピです。

塩レモンは、北アフリカ・モロッコで親しまれている調味料。日本でも今やすっかりおなじみですね。現地ではタジンなど煮炊きする料理のほか、サラダや肉料理とさまざまな料理の風味づけに重宝され、まさに日本の味噌のような存在。

モロッコのレモンは、日本のものよりも皮が薄く、酸味が穏やか。丸のまま切り込みを入れ、たっぷりの塩で漬け込みますが、私は日本のレモンで普段使いしやすくアレンジしています。レモンをくし形に切るやり方も多いけれど、このいちょう切りが断然お薦め。水分も上がりやすいから数日で仕上がるし、ほんの少量だけ使いたいときにも便利なんですよ。今回は、定番の鶏肉のタジンをはじめ、タイ料理やパスタなどへの応用レシピもあるので、ぜひお試しを。

もう一つは味噌。もともと新大豆と新米の麹でつくるものだから、寒い時季に一年分を仕込むイメージがあるけれど、私は一年中、ちょっと時間ができたときにポリ袋で少量ずつ仕込んでおきます。完成まで半年くらいかかるけれど、その甲斐のあるおいしい“手前味噌”が気軽につくれますよ。

塩レモンや味噌に限らず、発酵物はちょっとギリギリを攻め過ぎちゃったかな?なんて思っても意外となんとかなるけれど、たとえ失敗しても次はこうしよう、とやる気をつなげていくために、小さく仕込むことが何よりのポイント。つくり続けることで、わが家の味になっていきますから。

“塩レモン”のつくり方

つくって日が浅いものも爽やかでおいしいのですが、じっくりと寝かせた一年物もお薦め。

材料材料 (つくりやすい分量)

レモン3個(350g)(国産のもの)
天然塩大さじ3

1下ごしらえ

レモンは洗って厚さ3~4mmの輪切りにし、種を取ってからいちょう切りにする。

下ごしらえ

2ボウルに入れる

①をボウルに入れる。まな板にたまった果汁も残さずに。

ボウルに入れる

3塩を加える

②に塩を加え、まずはスプーンで全体をざっくりと混ぜる。

塩を加える

4混ぜる

さらに、果汁を出すように手でしっかりともみ込むように混ぜる。

混ぜる

5保存瓶に詰める

④を保存瓶に詰め、冷蔵庫で保存。塩が溶けて水分が上がればすぐに食べられるが、1年ほど寝かせたものも、ねっとりとして旨味が増しておいしい。使うたびに全体を混ぜ、水分につかるようにする。室温保存なら熟成も早いが、その場合は2ヶ月で食べきること。

保存瓶に詰める
完成

教える人

料理研究家 荻野恭子

料理研究家 荻野恭子

料理研究家。世界中を旅しながら現地の家庭やレストランで料理を習い、食文化を研究するのがライフワーク。これまでに訪れた国は65ヶ国以上。特に“塩”は長年追いかけ続けているテーマの一つで、近著に『塩ひとつまみ それだけでおいしく』(女子栄養大学出版部)がある。ほかに『手づくり調味料のある暮らし』(暮しの手帖社)など著書多数。自宅で料理教室「サロン・ド・キュイジーヌ」を主宰。

※この記事の内容は、『四季dancyu 2023春』に掲載したものです。

四季dancyu 2023 春
四季dancyu 2023 春
A4変型判(120頁)
2023年3月10日発売/1200円(税込)

文:鹿野真砂美 撮影:伊藤徹也

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。