カレーと油脂は切っても切れない仲にある。なぜなら、スパイスの風味は油脂でこそ引き出せ、油脂の中に封じ込め、それがカレーの味わいになるからだ。植物性原料だけで“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創りだした食用油脂「botanova」とスパイスの相性はどうだろうか。そこで、大阪で発祥した“大阪スパイスカレー”を牽引し、全国区に広めた立役者の一人である「旧ヤム邸」の植竹大介シェフに、「botanova」でつくるプラントベースのカレーの魅力、未来図を探ってもらった。
*プラントベースフード=植物由来の原材料を使ってつくる食品の総称。
大阪で発祥した“大阪スパイスカレー”は、スパイスを多用しながらもインドカレーとは一線を画した、個性豊かなカレーである。しかし、明確な定義はない。なんとなくイメージはあるが、シェフの発想を具現化するというフリースタイルもまた魅力となっている。「どこの店も、スパイスを感じる味わいにまとめています。なので、スパイスは多め。基本的な調理スタイルとしては、まずホールスパイスを油脂でテンパリングします。炒めて、香りを油脂に移すことですね。その油脂で具などを炒め、パウダースパイスと塩などで調味します。あとは軽く煮込むだけ。簡単でしょう」と笑う植竹シェフ。
ルウでつくるカレーよりも油脂は少なくて済み、どちらかというとさっぱりとした味わい。ご飯との相性もいい。だからこそ、食べたい欲求をそそり、食べた人を魅了し、そして新たなリピーターを増やし続けているのだろう。
植竹シェフがプラントベースのカレーに興味を抱いたのは、東京2020オリンピック・パラリンピック開催前のことだった。「スパイスカレーをより多くの人に味わってもらいたい。日本を訪れる外国の方々に、日本生まれのカレーの魅力に大いに触れてもらいたい。そう考えたとき、プラントベースのカレーの必要性を感じました」。折しも六本木の出店が決まり、4種類あるカレーの一つをプラントベースの“ベジカレー”で行くことにしたのである。「豆や根菜を使い、うちの特徴であるキーマカレー感を生かしたメニューを提供することにしました」。
店舗ごとに毎月メニューを替える旧ヤム邸。ベジカレーのメニュー開発も常に行なわれていたが、その中で感じたのが、メニューの広がりの限界だったという。「スパイスカレーはスパイスの風味に負けない強い旨味が必要なのですが、その旨味……肉に勝るものはないなと痛感した次第です」と植竹シェフ。
そこで、ミヨシ油脂が開発したプラントベースの油脂「botanova」を試してもらった。
植竹シェフが「botanova」でつくってくれたスパイスカレーは、“トマキムキーマ”と“麻婆キーマ”。ともに大豆ミートを使用し、豚キムチから着想したというトマキムキーマは“ラード風味”、麻婆豆腐をアレンジした麻婆キーマは“牛脂風味”で炒めた。「大豆ミートが、肉を焼き付けたような芳しい香りでマスキングされておいしさがぐぐんとアップ。もっと早く出会いたかったなぁ」。
さらにもう一品。“バター風味”で炒めるシンプルな副菜“クミンキャベツ”も紹介してくれた。「botanovaはスパイスの風味をきれいに引き出してくれますね。“バター風味”からはリッチな風味も感じます。バターというより高級なバター(笑)」。さすが植竹さん!である。 botanova“バター風味”は、発酵バターのテイストを目指して開発されているのだ。
旧ヤム邸に通う楽しみが増えそうだ。
・「botanova」4種はすべてNPO法人ベジプロジェクトジャパンのヴィーガン認証を取得。※同じ製造設備で動物性原料を含む製品も製造しています。
・「botanova」はRSPO(マスバランス)認証製品です。RSPO(マスバランス)認証製品は、持続可能なパーム油の生産に貢献しています。
botanova 植物のおいしさ ラード風味 | 20g |
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大豆ミート(ミンチタイプ/乾燥) | 50g(ゆでて戻し、水気を絞る) |
玉ねぎ | 1/4個(スライスしてざく切り) |
トマト | 小2個(ざく切り) |
カクテキ(大根キムチ) | 60g |
にんにくのすりおろし | 大さじ1/2 |
生姜のすりおろし | 大さじ1/2 |
A ホールスパイス | |
・ マスタードシード | 3g |
・ カルダモン | 5粒 |
・ ローリエ | 3枚 |
B パウダースパイス | |
・ カルダモン | 5g |
・ クローブ | 2g |
・ カレー粉 | 10g |
・ パプリカ | 3g |
・ チリパウダー | 1g |
水 | 1カップ |
塩 | 4g |
鍋にbotanova“ラード風味”を入れて中火にかけ、溶けたらAを入れ、香りが出るまで炒める。にんにく、生姜、大豆ミートを加え、炒め合わせる。大豆ミートに油が回ったら、玉ねぎ、トマトの順に炒めながら加える。トマトはつぶすようにして炒めるのがポイント。
玉ねぎが透き通ってきたらBを加えて混ぜ、水と塩も加えて混ぜ合わせる。最後にカクテキを入れて混ぜ、全体がなじむようさっと煮る。
botanova 植物のおいしさ 牛脂風味 | 20g |
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大豆ミート(ミンチタイプ/乾燥) | 50g(ゆでて戻し、水気を絞る) |
豆腐 | 1/2丁(2cmのさいの目切り) |
長ねぎ | 10cm(四つ割りにして1cm幅に切る) |
にんにくのすりおろし | 小さじ1 |
生姜のすりおろし | 小さじ1 |
にら | 15g(1cm幅に切る) |
C ホールスパイス | |
・ スターアニス | 3個(八角) |
・ クローブ | 6粒 |
・ ブラックペッパー | 1g |
・ 赤唐辛子 | 3本(種を取り除く) |
D パウダースパイス | |
・ カレー粉 | 15g |
水 | 1カップ |
E | |
・ 豆板醤 | 小さじ1 |
・ 甜麺醤 | 小さじ1 |
・ 紹興酒 | 小さじ1 |
・ 醤油 | 小さじ2 |
・ 塩 | 2g |
水溶き片栗粉 | (片栗粉大さじ1/2を水大さじ1/2で溶く) |
鍋にbotanova“牛脂風味”を入れて中火にかけ、溶けたらCを入れて炒める。香りが出てきたら、にんにく、生姜、長ねぎを加えて炒め合わせ、さらに香りが立ってきたら大豆ミートを入れて、炒める。
大豆ミートに油が回ったらDをふり入れ、炒め合わせる。続けて水とEを入れて混ぜ、豆腐も加えて2分ほど煮る。仕上げににらを加え、水溶き片栗粉でとろみをつけてまとめる。
botanova 植物のおいしさ バター風味 | 20g |
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キャベツ | 約200g(ざく切り) |
クミンシード | 1g |
ターメリックパウダー | 3g |
塩 | 2~3g |
鍋にbotanova“バター風味”を入れて中火にかけ、溶けたらクミンを入れて炒める。香りが立ってきたらキャベツを入れ、2~3分炒める。仕上げにターメリックを加えてなじませ、塩で調味する。
大阪スパイスカレーのパイオニア「旧ヤム邸」オーナーシェフ。1972年、大阪生まれ。大阪・心斎橋のカフェからスタートし、南船場に「ヤムカレー」をオープン。2011年に谷町六丁目に移転し、「旧ヤム邸」と改名する。中之島、梅田の出店に続き、2017年には東京進出を果たす。下北沢にオープンした後、六本木、神奈川・鎌倉にも出店。オリジナリティーあふれるスパイスカレーは店舗ごとにメニューが異なり、それもまた魅力となっている。実はハーブ系カレーも得意。
旧ヤム邸シモキタ荘
http://kyuyamutei.web.fc2.com
【住所】東京都世田谷区代沢5-29-9
【電話番号】03-6450-8986
【営業時間】11:00~14:30(L.O.) 18:00~20:30(L.O.)
土日祝11:00~15:00(L.O.) 17:30~20:30(L.O.)
【定休日】火曜
※旧ヤム邸は全6店。大阪は空堀店(谷町六丁目)、中之島洋館(肥後橋)、旧ヤム鐵道(梅田)、関東はシモキタ荘のほかYammy's(東京・六本木)、かまくら荘(神奈川・鎌倉)。
文:斉藤由利子 写真:森本真哉