大原千鶴さんの「今宵のあて」
水ダコの食感を豊かな風味で楽しむマリネ風の「タコ刺し」

水ダコの食感を豊かな風味で楽しむマリネ風の「タコ刺し」

タコは真ダコが一般的で、筋肉質で身が硬く締まっているのが特徴。それに比べると、水ダコはサイズが大きく、水分を含んでいて身が柔らかなのが特徴です。タコのあてというとタコ酢が一般的ですが、このタコ刺しはより酒を誘う一品。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。

レモンの香りがタコとレモンサワーのつなぎ役に

タコ好きっていらっしゃいますよね。居酒屋さんでメニューにあると、必ず頼んでしまう(笑)。酢の物もいいですが、ひと手間かけると新しい味になり、新たなお酒との出会いもあります。

このタコ刺しは、モチッとした身とコリッとした吸盤で、2種類の食感を味わっていただく一品。身と皮に分けるのがちょっと大変ですが、足の切り口に包丁目を入れ、手で皮をギュッとつかんで剥ぐようにします。

吸盤は酢を入れた水でゆでると赤くなり、色鮮やかで形も個性的に。身のほうはちょっと炙ってから薄切りにします。炙ると身が締まってプリッとなり、薄切りにしたものを重ねて盛りつけるだけで華やかな一品になります。

にんにくと胡麻油でいただくと、味にパンチが生まれ、さらに胡麻とレモンの皮の香りで美味しさがアップ。どんなお酒にも合いますが、レモンつながりでレモンサワーがピタリと合います。

タコ刺しのつくり方

材料材料 (2人分)

水ダコ70g(刺身用)
ミニトマト2個
A
・ おろしにんにく少々
・ 塩1つまみ
・ 胡麻油小さじ1/2
細ねぎの小口切り少々
白胡麻少々
レモンの皮のすりおろし少々

1水ダコの下準備

水ダコは、足の付け根のほうから指で皮をめくるようにして、足先に向かってしごきながら皮をむいて、身と皮に分ける。

水ダコの下準備
水ダコの下準備

2吸盤の下準備

①の皮に塩適量(分量外)をまぶして手でもんで水で洗い、包丁で吸盤だけ切りとる(吸盤以外は使わない)。小鍋に熱湯を沸かし、米酢少々(材料外)を入れ、吸盤をサッとゆでて水気をきる。

3炙る

①のタコの身に金串を刺し、直火でサッと炙って薄皮を焼き、薄切りにする。ミニトマトは4等分のくし切りにする。

4和える

②の吸盤と③のタコをボウルに入れ、Aを加えてよく混ぜる。

5仕上げる

器に④と③のミニトマトを盛り合わせ、細ねぎをあしらい、あれば白胡麻とレモンの皮をのせる。

完成

教える人

大原千鶴 料理研究家

大原千鶴 料理研究家

京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。

文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ

西村 晶子

西村 晶子 (ライター・編集者)

関西在住のライター、時々編集者。京都の和食を中心に、老舗から新店までを分け隔てなく幅広く取材。2006年8月号「明石の老舗に、至福の柔らか煮、タコ飯を習う」で初執筆。2018年5月号より「京都『食堂おがわ』の季節ごはん」、2021年5月号より「京都『食堂おがわ』の妄想料理帖」の連載を担当。