旬のものが一品あるとそれだけで気持ちが上がり、お酒が進みます。この季節だけ出回る小鮎はまさにそれ。その真価を味わうなら、絶対に美味しいのが天ぷら。揚げるだけのシンプルな料理だからこそ要されるひと技とは。お酒を愛する料理研究家の大原千鶴さんに、つくり方とそのコツを教えていただきました。
4月頃から出回る小鮎は、体長10cmほどの鮎の幼魚です。京都で小鮎というと、琵琶湖の天然の鮎。琵琶湖のものは、腑に爽やかな苦味があって、清涼感のある香りが特徴です。
この苦味や香りを食べたときにも感じられるように、カリッとした衣でパンチを効かせます。天ぷら衣は、粉と水だけで、卵は入れません。卵を入れるとふんわりするのですが、時間が経つとベチャッとなり、せっかくの鮎の美味しさを台無しにしてしまうからです。
ポイントは鮎を油に入れたらしばらくは触らないこと。揚げている途中でお腹が破裂しないように、表面が固まってから上下を返し、火を通します。ほろっとした身の美味しさや独特の香りがあり、苦味の余韻は格別です。焼き鮎はビールとよく合わせますが、天ぷらはハイボールともぴったり。
揚げたては最高のあてで、何物にも代えがたい美味しさ。豪快に揚げて、たっぷり味わってください。
梅ソース | |
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・ 練り梅 | 小さじ2 |
・ 水 | 小さじ1 |
・ 砂糖 | 小さじ1/4 |
・ 薄口醤油 | 小さじ1/4 |
小鮎 | 50g |
小麦粉 | 大さじ1/2(下粉用) |
★ 衣 | |
・ 小麦粉 | 20g |
・ 水 | 30g |
米油 | 適量 |
青じそ | 適宜 |
材料を混ぜておく。
小鮎に小麦粉をまぶし、軽く混ぜ溶いた衣にくぐらせ、170℃に熱した米油に入れる。表面が固まってきたら箸で時々上下を返しながらカリッと揚げ、油をきって塩少々(材料外)をふる。あれば青じそも、片面だけ衣をつけて、同様に揚げる。
器に盛り、①を添える。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。近著「大原千鶴のいつくしみ料理帖」(世界文化社)がある。2023年4月より、オンライン料理レッスンもスタート。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ