botanovaと巡る、美味なるプラントベース
進化系チャイニーズの奇才、西岡英俊シェフの大根パイ

進化系チャイニーズの奇才、西岡英俊シェフの大根パイ

プラントベースフードの世界が賑やかになりつつある。代替肉の代表格である大豆ミートはバラエティー豊かになり、植物性のミルクやチーズ、卵などの食品が続々と増えているのだ。そんな中、植物性原料だけで“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創りだしたのが、ミヨシ油脂の業務用食用油脂「botanova」である。そこで、トップシェフたちに実際に使ってもらい、プラントベースフードをご指南いただくシリーズ企画を展開することに。記念すべき第1回は、銀座「Renge Equriosity」の西岡英俊シェフです。
※プラントベースフード=植物由来の原材料を使ってつくる食品の総称。

おいしさは塩味と油脂のバランスで決まる

ヌーベルシノワ、モダンチャイニーズ……、「Renge Equriosity」(レンゲ エキュリオシティ)の料理は、どれにも当てはまるし、しかし、どこにも属さない。西岡シェフは料理人人生をスタートさせた上海料理を軸にしつつも、和や洋のエッセンスを盛り込んだボーダーレスなアプローチを得意とする。食材の滋味を大切にした繊細な味わいで、食べた人の五感を悦ばせ、心や体にも幸せを届けている。

「料理のおいしさに欠かせない基本要素は、塩味と油分の組み合わせです」と語る西岡シェフは、おいしさへの探求心が半端ない。中国料理に欠かせない豆板醤などの調味料も、おいしい要素を分析し、可能な限り手づくりするほどだ。

西岡シェフ
西岡シェフ
塩と油の関係は中華に限った話ではなく、おいしい料理というのは塩味と油分の組み合わせの上に、酸味や苦味、香りなどが重なって、複雑な味わいを紡ぎ出しています。どういうタイプの塩を選ぶか、どんな油脂を使うか、さらには使うタイミングも考えます。

西岡シェフは塩も油脂もそれぞれ10種類ほどを使い分けている。「自分自身が油に弱い体質なこともあって、店では植物性の油をメインに使っています。とはいえ、動物性油脂には旨味がありますし、何よりも香りがいい。やはり中華料理にはマストアイテムです」。動物性油脂の実力を知り尽くすからこそなのだろう、西岡シェフは「botanova」に興味津々。目を輝かせたのだった。

動物性油脂の魅力を放つ、植物性油脂「botanova」

botanova
ミヨシ油脂の「botanova」は、植物性原料だけで“動物性油脂の特長を活かしたおいしさ”を創りだした油脂。上から時計回りに「botanova 植物のおいしさ ラード風味」「botanova 植物のおいしさ 牛脂風味」「botanova 植物のおいしさ バター風味」。

「botanova」は、創業101年を迎えたミヨシ油脂の、プラントベースの食用油脂ブランドだ。“バター風味”“ラード風味”“牛脂風味”の3種があり、動物性油脂に含まれる香り成分や風味バランスを徹底分析し、植物性原料だけで動物性油脂の特長を活かしたおいしさを創りだしている。
たとえば“バター風味”が目指したのは、発酵バターだ。この開発には2年半を要したという。濃厚な口当たりは和の健康食材である糀甘酒などで、自然な風味は花や果実などの植物由来成分のみを使った香料で表現。そして、料理やお菓子として焼きあがったときに完成する発酵バターのような旨味と豊かな風味。業務用加工油脂の老舗、ミヨシ油脂ならではの風味を組み立てるノウハウや技術が随所に駆使され、食材が加熱されてメイラード反応が起こったときに最高のパフォーマンスを発揮するよう設計されているのである。

botanova
「botanova」は3アイテムとも固形油脂だ。スプレッドでも使える“バター風味”のみ要冷蔵で、“ラード風味”“牛脂風味”は冷暗所で保管できる。

そもそもミヨシ油脂が「botanova」の開発に着手したきっかけに、プラントベースフードへの関心が高まっている世界的な潮流がある。セレブを中心に広がりを見せているリーダー格の欧米、プラントベース大国となる可能性を秘めている中国での広がりに加え、ブラジルなどの新興国でもその需要が高まりつつあるという。環境問題、食料危機、健康志向など、人々の関心の入り口はさまざまだが、日本の市場も急成長が予想されている。
こうしたトレンドを踏まえ、ミヨシ油脂では「botanova」を国連が掲げる目標「SDGs」に関連づけ、環境問題や社会問題などの解決にも寄与するブランドとして開発。

まるで動物性油脂のよう! こんな油脂を待っていた

西岡シェフの大根パイ
西岡シェフの大根パイ。全粒粉入りパイ生地のサックサクな食感と、botanovaの牛脂風味がしみた大根フィリングが魅惑のハーモニー。レシピは記事末で紹介!

さて、西岡シェフ。何をつくろうかと思案することしばし。「点心で人気の大根パイにしましょう。『botanova』の3種を使ってつくってみたい」と、さっそく試作開始。

西岡シェフ
西岡シェフ
お、加熱前と加熱後ではまったく風味が違いますね。加熱するとポテンシャルが前面に出てきて、がぜん風味が上がります。パイ生地に“バター風味”を折り込もうかなと考えましたが、伝統レシピにのっとり“ラード風味”を混ぜ込み、さらに“ラード風味”で揚げることにします。

大根パイのパイ生地は2種類を用意する。強力粉と薄力粉に砂糖と水、油脂を混ぜる生地(A)、そして全粒粉(薄力粉)と油脂だけを混ぜる生地(B)だ。西岡シェフはこの油脂に“ラード風味”を採用。AでBを包み、麺棒でのばして巻いてを繰り返して層をつくる。そしてフィリングの大根には金華ハムや干し海老などで旨味を加えるところを、動物性食材を使わずに“牛脂風味”で炒めることに。「風味もいいし、コクもつきます。物足りなさは感じません」と西岡シェフ。また、ソース用のブロッコリーは“バター風味”で炒めた。最後に成形したパイを“ラード風味”で揚げれば、「botanova」コンプリート!

botanova
加熱調理することで風味が完成する「botanova」。とんかつをラードで揚げるように、“ラード風味”で揚げることで大根パイに風味とコクが育まれる。
大根パイ
油に弱い体質という西岡シェフをして「何個も食べられそう!」と手を伸ばさせた大根パイ。「botanova」の“牛脂風味”をまとった大根の旨味、“ラード風味”のコクが軽妙なパイ生地。これだけでも十分に旨いが、“バター風味”で炒めたブロッコリーとナッツミルクによる味わい深いソースが、おいしさを重層的にし、満足感の高い一品に仕上げている。

花咲くようにふわっと開いたパイ。サックサクの生地の中からは、“牛脂風味”のコクがしみ込んだ大根の旨味が広がる。「“ラード風味”で揚げると、植物性油脂なのにまるでラードで揚げたようなフレーバーに。テンションが上がりますね。違いは、後味。“ラード風味”で揚げた大根パイは軽さを感じます。いくらでも食べられそうです」と満足げだ。
西岡シェフが「botanova」に前のめりがちなのには、もう一つ理由がある。実は、東京・神宮前にヴィーガンヌードルの店「Chipoon」(チプーン)をプロデュースしたことだ。「息子が生まれて、離乳食のために十数種類の野菜やきのこ、海藻などを使ったクールブイヨンをつくるように。これをコース料理のヌードルのスープにアレンジしたところ、評判になりまして。Chipoonとのご縁ができました。とはいえ、油分がないとラーメンとしては物足りません。あのときに『botanova』と出合えていたら」と悪戯っぽく笑った。

西岡シェフ
西岡シェフ
料理の仕上がりも食べた満足感も、まるで動物性油脂のようです!

西岡シェフの店名にある「Equriosity」は、“方程式=Equation”“好奇心=Curiosity”“探求心=Inquiry”というコンセプトを込めた造語だ。「botanova」を手にした西岡シェフは「動物性油脂のニュアンスも出ているし、汎用性が高そうですね。まずは和え麺をつくってみたいなぁ。いや、揚げ焼き料理が先かな」。試してみたいメニューが次々と思い浮かんでいるようすである。トップシェフの創造力をかき立てる「botanova」の旅は始まったばかりだ。

大根パイの成形アレンジ
コロンッとかわいい大根パイの成形アレンジ。パイ生地1枚で大根フィリングを包み、西岡シェフ自家製の豆板醤を添えた。程よい小ささに、手が止まらなくなる!
油脂でおいしい暮らし①
みんな大好きな「コク」

日本人が好む「コク」という味わい。とくに煮込みなど「コクがあっておいしい!」料理はたくさんある。しかし、りんごなどのフルーツがどんなにおいしくても「コクがある」とは表現しない。実はこのコク、油脂と深い関係にあることはご存じだろうか。油脂そのものには明確な味はないと考えられているが、食品が持つ味や香りを持続させるのに一役買っているのである。塩や砂糖などの調味料が親水性なのに対し、多くの香り成分は親油性があり、油によく溶けるという。口に入れた瞬間は食材の味や香りが出てくるが、咀嚼するにつれ、食品の中に含まれる油分から徐々に香りが感じられるようになり、結果として香りの持続性が増す、というわけだ。油脂とコクは、とても密接な関係にある。
botanova
botanova
「botanova」は、“植物”の「botanical」と“新しい”という意味の「nova」からネーミング。プラントベースで新たな食の領域を切り拓く、というミヨシ油脂の意気込みが込められている。2020年9月に“バター風味”と“ラード風味”が、2021年12月より“牛脂風味”が発売された。バターやラードなど、動物性油脂が好きな人にも「おいしい!」と感激してもらえる味・香り・食感を提供する。
ヴィーガン認証マーク&RSPO認証マーク

・「botanova」3種はすべてNPO法人ベジプロジェクトジャパンのヴィーガン認証を取得。※同じ製造設備で動物性原料を含む製品も製造しています。
・「botanova」はRSPO(マスバランス)認証製品です。RSPO(マスバランス)認証製品は、持続可能なパーム油の生産に貢献しています。

「botanova」を使った大根パイのレシピ

材料材料 (20個分(※1))

●パイ生地
A
・ 強力粉150g
・ 全粒粉(薄力粉)35g
・ グラニュー糖25g
・ 水125g
・ botanova 植物のおいしさ ラード風味45g
B
・ 薄力粉200g
・ botanova 植物のおいしさ ラード風味100g
●大根フィリング
大根約1/2本
万能ねぎ5本くらい
大根の重さの1%
きび砂糖大根の重さの1%
botanova 植物のおいしさ 牛脂風味40~50g
●揚げ油
botanova 植物のおいしさ ラード風味適量
●ソース
ブロッコリーの花蕾1個分
ヘーゼルナッツミルクブロッコリーと同量(※2)
botanova 植物のおいしさ バター風味30~40g

※1 成形スタイルによってつくれる個数は変わります。
※2 ヘーゼルナッツミルクのつくり方(つくりやすい分量)/ヘーゼルナッツ100gはひたひたの水に丸1日つけておく。水気をきってミキサーに入れ、水1/2カップを加えてなめらかになるまで撹拌する。

つくり方

1パイ生地を仕込む

(A)ボウルにふるった強力粉、全粒粉、グラニュー糖を合わせ、botanova “ラード風味”を細かくちぎって加えてなじませる。水を3回に分けて、加えながら混ぜる。なめらかになるまでこね、ラップに包んで冷蔵庫で30分以上休ませる。
(B)ボウルにふるった薄力粉を入れ、botanova “ラード風味”を細かくちぎって加え、混ぜ合わせる。約15gずつ20個に分けて丸め、冷蔵庫で少し休ませる。

2大根フィリングをつくる

大根は皮をむいて2mm角くらいの棒状に切り、塩、きび砂糖を混ぜる。30分ほどマリネし、水気をきつく絞る。万能ねぎは小口切りにする。
フライパンにbotanova “牛脂風味”を入れて中火にかけ、大根と万能ねぎを炒める。塩少々(分量外)で味を調え、冷ます。

大根フィリングをつくる
大根にしっかり火が通ったら万能ねぎを加え、炒め合わせる。調味したら器などに取り出し、よく冷ます。

3ソースをつくる

ブロッコリーは軽く塩(分量外)をふり、5分ほど蒸す(または塩ゆで)。フライパンにbotanova “バター風味”を入れて中火にかけ、ブロッコリーを炒める。ヘーゼルナッツミルクも加えて炒め合わせ、ミキサーでなめらかになるまで撹拌する。

ソースをつくる
botanova “バター風味”が溶け出したらブロッコリーを炒め、油脂がなじんだら、ヘーゼルナッツミルクを加えて、炒め合わせる。
ソースをつくる
ミキサーには汁ごと移し、なめらかになるまで撹拌する。このとき、水分が足りないときは水を適宜足すこと。

4パイ生地を折り込む

Aを約19gずつ20等分にして丸める。打ち粉(分量外)をふって麺棒で7~8cmにのばし、Bを包む。

麺棒で12~13cmほどにのばして手前からくるくる巻く。90度向きを変えて再度、麺棒でのばして巻き、長さを半分に切る。断面を下にして置き、麺棒で直径8cmほどに丸くのばす。生地の真ん中を厚めにするのがポイント。

パイ生地を折り込む
パイ生地Aを麺棒で7~8cmにのばし、真ん中にBを置いてきっちり包み込む。
パイ生地を折り込む
縦方向に12~13cmにのばした生地は手前からくるくる巻く。向きを90度変えて置き、もう一度のばして巻いて層をつくる。

5大根フィリングを包んで成形する

パイ生地2枚で大根フィリングを適量挟み、周囲を折り込むようにして閉じ合わせる。残りもすべて成形する。

大根フィリングを包んで成形する
1枚のパイ生地の真ん中に大根フィリングを適量のせ、もう1枚を重ねる。

6揚げる

中華鍋にbotanova “ラード風味”をたっぷり入れて160℃に熱し、5のパイを揚げる。生地が花咲くように美しく揚がったら取り出し、ソースとともに器に盛る。

揚げる
パイは完成面を上にして油脂に入れるのがポイント。裏側が色づいてきたらひっくり返し、上下を返しながら好みの色合いまで揚げる。

お問い合わせ情報お問い合わせ情報

ミヨシ油脂 戦略企画本部
03-6775-9385(平日9:00~17:30)

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西岡英俊(にしおか・ひでとし)

西岡英俊(にしおか・ひでとし)

1972年生まれ、東京都出身。調理学校在学中より、中国料理の名店「シェフス」の創業者、故・王恵仁氏に5年間師事する。その後、スペイン料理やイタリア料理、和食などを経験した後、王氏が東京・新宿に「シェフス」をオープンさせるのに伴い入店。2009年、東京・新宿「Chinese Tapas Renge」で独立。2015年に「Renge Equriosity」として東京・銀座に移転した。

Renge Equriosity
http://renge-equriosity.tokyo/
【住所】東京都中央区銀座7-4-5 GINZA745ビル9階
【電話番号】03-6228-5551
【営業時間】17:30~19:30入店
【定休日】日曜、月曜 
※完全予約制(WEB予約/15分刻み)

文:斉藤由利子 写真:森本真哉